株式会社 資本市場研究所きずな
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   →公開企業
      ・改正産活法で期待したい、大型M&Aの増加と自社株取得 (5月24日)
      ・MBOでの株主とアドバイザーの問題 (3月7日)
      ・株主とは誰のことを指すのか (12月15日)
      ・MBO増加の可能性を易しく考える (8月13日)
      ・M&A等組織再編促進の為の会社法改正案 (7月4日)
      ・今日的買収防衛策の意味は (6月10日)
      ・靴ひもと電話 (2月19日)
      ・TOBルールの考え方、金融庁Q&Aより (2月16日)
      ・KDDIのJCOM株取得問題から、改めて考えるTOB規制 (2月3日)
      ・MBOの進め方、そして上場子会社の場合は・・・ (1月20日)
      ・投資家が注目し、株主が考えるMBOプレミアム (1月18日)
      ・三洋電機TOBへの投資銀行的視点 (11月6日)
      ・TOBの風景 (9月15日)
      ・
TOBプレミアムについて (8月12日)
      ・M&Aのインサイダー取引 (7月13日)
      買収防衛策について (4月10日)

   →中小企業
      中小企業のM&A (8月25日)
      ・
中小企業M&Aの課題と期待 (4月13日)

   →M&A一般
      ・アコーディア・ゴルフの資本政策について~斬新な経営革新か、究極の買収防衛策か (4月24日)
      ・中堅企業のM&Aにおけるアドバイザーのポイント(1月14日)
      ・M&Aの基本要素とアドバイザー(1月10日)
      ・TOB(公開買付)における証券会社の役割について(3月19日)
      ・買収防衛策について (11月20日)
      ・敵対的買収とは何かを考える (11月19日)
      ・日本の金融機関にとって投資銀行業務とは=M&Aの場合(7月5日)
      ・誰が株主なのか=MBOと信用取引 (2月23日)
      ・インサイダー取引とTOB (7月29日)
      ・新株予約権の使い様 (4月8日)
      ・業界のインサイダー取引に関して考える (2月8日)
      ・法人関係情報の管理について (8月4日)
      ・M&Aにおける利益相反  (7月28日)
      M&Aルール=英国の場合 (6月26日)
      ・少し粗いのでは、M&Aアドバイス (5月19日)
      ・
M&Aの環境-全体 そして証券 (5月11日)
      ・M&Aビジネスのアンバンドリング (4月22日)

   →銀行のM&A業務
      ・M&Aというビジネス=大手金融機関編 (2月21日)
      ・
地域金融機関のM&A (7月9日)


アコーディア・ゴルフの資本政策について~斬新な経営革新か、究極の買収防衛策か (4月24日)
ちょうどアベノミクス相場が始まる直前の一昨年11月に、PGMホールディング(2466)による50%以上もプレミアムを付けた買付価格のアコーディア・ゴルフ(2131)株式に対するTOBが発表されました。アコーディア側は反対意向を表明し、途中で株式会社レノ(投資会社)などが大量(共同保有者を含む)にアコーディア株式を買い付けたことで、それぞれの動向が注目されていましたが、結果はPGM側が最低目標にしていた発行済み株式総数の20%に達しなかった為(17%)、このTOBは不成立となりました。
 アコーディア側が、連結配当性向を90%とすることを表明し、株主還元策を強めましたが、同時にホワイトナイトと見られた株式会社レノなどの出口戦略も関係者などの関心を集めました。

 そのアコーディアが、主要な資産であるゴルフ場を三分の二以上切り離す思い切った資本政策を3月28日に公表しています。勿論、上場企業の内容が大きく変わる為、株主総会での特別決議による承認を前提にしています。
その内容は、以下の3つに分かれます。
A) 主要資産を切り離し、事業ファンド化して、シンガポール市場に上場して、資金回収を図る
B) 約450億円以上の自社株取得を実施する
C) 新株予約権付ローンで200億円調達する

 全体像が少し分かり難いので、簡略化(図式化)してみました。

☆ アコーディア・ゴルフの資本政策について

 この様な資本政策は、筆者の私見では非常に斬新だと思います。特に、事業ファンドをシンガポール市場に上場することに関しては、特筆されるべきスキームです。しかし、一方では、過去の経緯からみて究極の買収防衛策(クラウン・ジュエル=買収者の欲する資産を切り離す)にも見えます。

斬新な経営革新なのか、究極の買収防衛策なのか、そのことを決めるのは5万人以上もいらっしゃる株主だと思います。
 

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中堅企業のM&Aにおけるアドバイザーのポイント(1月14日)
筆者はM&Aについてよく相談を受けます。その大半は、売りたい・買いたいニーズを企業から相談されているので、お相手探しを手伝って欲しいというM&Aアドバイザーを目指す方々からです。M&Aの第一歩は、相手探しからですので、これはこれで大事なM&Aアドバイスのスタートだと思います。しかし、以下の図に示しましたように、M&Aを進めていくと、売り手企業のデューデリジェンス(財務面、業務面、契約など法律面など)を行う際や交渉を進める為の契約を詰めていくとき、会計士や弁護士などの専門家の手を借りていくことが多いのも事実です。
 M&A実務のポイントは、相手と合意するところが最初の目的になりますので、M&AアドバイザーはこれらのM&Aプロセスを、必要な範囲で各々の専門家に頼りながら、可能な限り簡素化し、スムーズに売り手・買い手双方の最終判断まで持っていくことではないかと思います。

☆ 中堅企業M&Aアドバイザリー業務のポイント

 M&Aアドバイザーの業務そのものについてですが、上記の図で示したようなM&Aのプロセス管理が中心になります。したがって、アドバイザー業務の参入障壁が低いのですが、一般的には依頼主である売り手若しくは買い手に対して、M&Aプロセスを管理していける機能と実績を示す必要があります。
 また、最初のプロセスである相手探しに関して、専業M&AアドバイザーなどがM&Aに関する情報共有ネットワークを構築している場合が増えてきましたが、地域において地元企業情報に詳しい地域金融機関や税理士会などと情報共有で提携を強めようとしています。一方、地元企業に密着した地域金融機関側も、顧客企業の多くのM&Aニーズに接していますので、相手企業探しは一致するところです。
ただし、M&Aに関する情報は顧客企業の重要な経営・事業戦略に関するものでもあるので、M&A情報の共有をどのような段階でどの程度行っていき、かつ顧客情報として管理していくかは、地域金融機関にとって課題となっています。

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M&Aの基本要素とアドバイザー(1月10日)
M&Aを最もシンプルに考えますと、次のようになります。
◎企業や事業を、売り手と買い手が合意して売買すること。
 国語辞書のような書き方で、読まれている方には恐縮ですが、M&Aのプロセスは複雑に考えれば相当専門的になりますので、必要最低限のことから見直しました。

つまり、M&Aは売り手の経営者(=オーナー)が、買い手に対して“あなたに任せる”と言ってしまえば成立することなのですが、当然任せる条件はあり、その条件の中でもっとも大きなものは対価(概ね金銭)です。
買い手からすると、企業(事業)価値ということになります。

 その対価=企業価値に関して、買い手は売り手が合意できる条件を出せるかM&A最大のポイントですが、買い手がオーナーのように単独で決断できればM&Aプロセスは短縮できます。しかし、通常は買い手の他の株主や主要な取引先などに納得してもらう根拠が必要で、その為に財務内容からみた企業価値の適正さを確認するため、売り手の決算書類などの精査(DD=デューデリジェンス)を行うのですが、これをサポートするのは会計士系コンサルが行う場合が多いです。この精査した財務内容から、資産や収益性に基づき一般的な企業価値を算出します。しかし、売り手を納得させる為、買い手としてはこの売り手企業の一般的な企業価値にプレミアムをつけるケースも多くみられます。買い手が、売り手企業と同業の場合などは全体としての売上高拡大などでプレミアムは買い手自らが想定しやすいかも知れませんが、異業種やファンドなどの場合、他の事業との相乗効果を考えることになります。M&Aの案件が大きい場合など、この相乗効果の算出し適正なプレミアムについて、投資銀行や金融機関のアナリストなどが助言する場合もありますが、殆どのM&Aでは買い手自らが判断していきます。

 次に、売り手の条件としては売却する事業に関するものです。例えば、従業員の雇用は守って欲しいとか、この事業分野は続けて欲しい、この取引先との取引を継続して欲しいといったようなものです。一方、買い手としても事業を上手く継承していく為、売り手側に条件とつけるケースもあり、この様な条件は契約書のかたちで落とし込みます。これは、当然弁護士の仕事となりますが、M&A経験のある弁護士の方が、対価=企業価値以外の条件のすり合わせをよりスムーズに行うといったのが一般的な評価のようです。
 なお以上のプロセスは、買い手側にとって以下の様なM&Aの代表的な失敗を避けることも、その目的としています。
●決算書類に未計上の資産や負債(固定資産や引当金未計上、売掛債権や棚卸資産滞留、未払金・費用や退職給付債務の未計上など)、DDで認識できなかった契約の存在など。
●買収後の統合プロセスで、直後に主要な従業員は退社してしまう。
●買収後、取引先や金融機関などとの関係が変わり、業績悪化してしまう。
●評価した売り手企業の技術が、俗人的だったり、ノウハウは社内に蓄積されていないため、成果が期待値以下となる。  など
 
 とても長い前置きになりましたが、上記のM&Aプロセスをなるべく簡略化してスムーズに行うことと、その相手企業(事業)を選定していく手助けを行うのがM&Aアドバイザーの仕事です。特に業法上の資格は必要ありませんが、上記の様な主なM&Aプロセスにおいて、会計士や弁護士などの専門家との連携が必要ななこと、相手企業を選定して際、依頼企業の経営者の意向に沿った対象を選択することが可能な情報網を確保していることなどがM&Aアドバイザーとしての強みになります。したがって、金融機関や証券会社・専業のM&A専業者などがアドバイザーの役割を果たすケースが多いのですが、誰もがM&Aアドバイザーとなれることもまた事実です。
 (業法で業務内容が定められている銀行や証券は、本業に付随する業務としてM&Aアドバイザー業務を行えることが明確化されています。)

なお、M&Aアドバイザーの実務上のポイントとなることは、次回に触れたいと思います。

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TOB(公開買付)における証券会社の役割について(3月19日)
上場会社が対象となるM&Aにおいて、証券会社が果たす役割を簡単に示しますと、以下の様な機能があります。

(ア) M&Aマッチメーカー的機能=売り手・買い手の仲介を行うもので、M&A助言専業・地域金融機関なども同業務を手掛けています。特に、ライセンスが必要ということではないので、この業務を行うものの参入障壁はありません。

(イ) フィナシャル・アドバイザー的機能=売り手若しくは買い手のどちらか一方の立場にたって、適切にM&Aが実行されるように助言を行います。企業価値算定やデューデリジェンスの支援などを行うこともあり、金融機関・商社などもこの業務を行います。上記(ア)の様に売り手・買い手の両者の立場に立たないのは、どちらかに利益相反が発生する可能性があると考えるからです。
なお、買い手側に立ったフィナシャル・アドバイザーは、買収資金の資金調達に関与することもあります。

(ウ) 公開買付(TOB)代理人=これは株式を直接扱う為、証券会社でなければ行えません。

 M&Aは、その一つ一つが個別のプロジェクトと様なもので、案件によってその対応も異なりますが、株式を集めるという行為においては、実務的に証券会社が関与します。最近の実例をもって、その役割を示したいと思います。

◎西武ホールディングスに対するサーベラスのTOB
【TOBの概略】
・買付対象株=西武ホールディングス株式(西武鉄道は2004年12月に上場廃止、現在上場準備をしていると言われているが、株主が1.3万人いて有価証券報告書提出義務がある為、TOB規制の対象となる)
・買付者=エス-エイチ ジャパン エルピー(サーベラスグループの関連会社)
・買付目的=サーベラスグループは、現在32.44%保有している株式を、36.44%まで増加させ、経営陣を強化したいとしている。
・買付株数=13,672,700株まで
・買付価格=1400円(現在の単元未満株買取価格1,175円の19.15%プレミアム)
・買付期間=3月12日から4月23日まで

【TOB環境】
現在、上場政策等を巡って筆頭株主のサーベラス側と現経営陣が対立していると言われており、またTOB公表後も会社からは賛同意見は表明されていない。所謂、敵対的買収に近いかたちになると見られている。

【証券会社(公開買付代理人)の役割】
 公開買付報告書によると、公開買付代理人のA証券に対して、今回のTOBにおいて2.4億円の手数料(買付金額に対して1.25%)が予定されている。この分が何の対価なのかについて、以下のようなことが考えられる。(実際の業務内容は、買付者と代理人間の契約によりますが、以下は筆者の推測も含みます)
・TOB応募者から株式を預り、買付応募株数が上限を超えた場合は比例案分を行う。
・TOBが成立した場合、応募株主への代金の引き渡し。不成立の場合や比例案分に洩れたケースの株式の返却
・上記2つは、通常の公開買付代理人業務だが、今回は対象会社の同意の得られない敵対的TOBのなる可能性もあり、代理人業務として1.3万人の株主に対するTOB応募への何らかの勧誘行為が行われるのではないかと見られる。

今まで、証券会社は敵対的買収行為に対して避ける傾向がありましたが、TOBのあり方も多様化する中、この様な証券ビジネスの拡大はあっても良いのではないでしょうか。 
 
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買収防衛策について (11月20日)
 前回は敵対的買収について取り上げましたが、この行為への対抗策として、新株予約権(ライツ)を使った買収防衛策を導入している上場会社があります。レコフの調べでは、本年5月末で519社が導入しているようですが、基本的な防衛スキームは、敵対的買収者が行使できないライツを株主全員に割当て、敵対的買収者の持分が実質的に大きく減少するように設計したものです。

その概要は次のようになります。
【買収防衛スキームの概要】(代表的なもの:スキームの呼称はライツ・プラン)
・株主全員に新株予約権(ライツ)を割当て
・行使価格は、株主の負担が少ないように1円
・但し、20%以上を保有、若しくはTOBなどで保有しようとする株主は行使できない。(この事を、行使条件とする)

このスキームは、ライツを株主全員に割当てるところまではライツ・オファリングと同じですが、行使価格が1円だったり、敵対的買収者が行使できない企業防衛を目的としたもので、資金調達のライツとは全く違います。勿論、ライツは上場されません。ただし、もしスキームが実行された場合、敵対的買収者以外の他の株主が、1円を払込んで新株を受け取るといった事が必要となり、効果を上げる為には他の株主の協力が必要です。

また、敵対的買収者(取りあえず会社に事前相談もなく、大量に株式を買付けると言う意味)に対して、上記の買収防衛スキームを必ずしも実行するという訳ではなく、以下の買付ルールに従った場合は、買収防衛スキームを発動しないというのも一般的な買収防衛策です。

【大規模買付ルール】
・20%以上の大規模買付けを行った場合、目的を上場会社に伝え、それは公表される。
・上場企業が準備した第三者委員会によって、買収目的などを確認する必要書類が要求される。これを10日以内に第三者委員会に提出。
・60日以内に第三者委員会は評価を行い、その際、買収条件の変更などの交渉が行われることもある。

☆買収防衛策の概要

買収防衛策については、株主・投資家にとってマイナスのイメージがありますが、上記のようなものであれば、買収者の買付行為を必ずしも阻害するものではないように思います。また、買収防衛策導入企業の株価に対する影響を検証しようとした研究論文も複数ありまあすが、明確に買収防衛策と株価の関連を定義するのは無理のようです。
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敵対的買収とは何かを考える (11月19日)
11月15日に発表されたPGMホールディングス(2466)によるアコーディア・ゴルフ(2131)の公開買付け(TOB)は、久々の敵対的買収と報じられている。このTOBに至った経緯は、PGM側の記者発表文によると以下の様な概要になっている。

・本年、1月26日、PGMはアコーディアに対して経営統合を提案
・3月22日までの間、両社による協議・検討
・3月22日、アコーディア経営者の私的流用疑惑で協議打ち切り
・4月26日、アコーディア株の1.8%を保有するオリンピア(PGMの兄弟会社;親会社はそれぞれ平和(6414))が6月の株主総会に向け役員選任の株主提案を行う。所謂、プロキシーファイト。
・5月21日、アコーディアの経営トップが退任
・6月29日のアコーディア株主総会において、オリンピア側の株主提案が否決
・以上の経緯から、PGMはアコーディア側が統合提案を受け入れる可能性が低いと判断、事前の両社の協議なく公開買付け開始を決定

また、公開買付けは次のようなものだ。
・対象株式:アコーディア・ゴルフ普通株式
・公開買付価格:81,000円(過去6ヵ月の市場価格に対して、57.81%のプレミアム)
・公開買付期間:本年11月16日~平成25年1月17日までの38営業日
・買付予定株数:209,224株(下限)~524,105株(上限)
※応募が上限に達した場合、比例案分方式で決定

ここで敵対的買収の定義を確認しておきたいが、一般的には“上場企業の株式を、対象企業経営陣の同意を得ずに市場における買い集めによって取得すること。”(あずさ監査法人HPより)とするのが、最も簡略化された説明だろう。今回の件では、この定義に当てはめれば敵対的買収行為ということになるが、対象会社の株主や顧客であるゴルフ場の利用者にとって、敵対的なのかどうかは議論があるところだろう。

但し、今回の公開買付けにおいて、そのスキーム上注意を要する点もあると考えるので、指摘しておきたい。
それは、買収者が対象会社との経営統合を目的にした買収にも係らず、対象会社の50%までしか今回のTOBでは買付けない。その理由としては、対象会社の株式を半数取得したところで、両社の経営統合に向けたデューデリジェンスを実施したいとしている。一応、買収者側の表明としては、今回のTOBに応じなかった株主から再度対象株式を買い取る場合、今回のTOB価格を前提に検討する可能性があることは示されている。しかし、デューデリジェンスの結果、残った株主が不利になる条件変更(統合比率や買取価格)の可能性も残っている。
買収者の目的からすれば、TOB応募者から全て買い取る方がスキームとしてはスッキリしているが、買収資金の問題を指摘する関係者もいる。今回の買収資金は、420億円を超えるが、80億円はPGMの自己資金、340億円は親会社の平和からの融資とされている。
なお、金融商品取引法のTOB規制によれば、残った株主が不利にならないよう強圧的二段階買収を避ける目的で、三分の2以上を取得するTOBにおいては、応募者全員から買い取らなければならない義務を課しているが、今回は半数までなので、この条項に抵触しない。買収者のTOB成立後の対応が注目される。

【敵対的買収事例】(太字は事業会社による)
・村上ファンド⇒昭栄(2000年)
・スティール・パートナーズ⇒ユシロ化学工業(2003年)
・スティール・パートナーズ ⇒ソトー(2003年)
・夢真ホールディングス⇒ 日本技術開発(2005年)
・ライブドア ⇒ニッポン放送(2005年)
・楽天 ⇒東京放送(2005年)
・村上ファンド ⇒阪神電気鉄道(2005年)
・ドン・キホーテ⇒オリジン東秀(2006年)
・王子製紙 ⇒北越製紙(2006年)
・スティール・パートナーズ⇒明星食品(2006年)
・スティール・パートナーズ v. ブルドックソース(2007年)

※いずれも買収は成立せず
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日本の金融機関にとって投資銀行業務とは=M&Aの場合(7月5日)
 今はあまり言わなくなったが、ある程度の規模の金融機関なら、そのほとんどが投資銀行業務を強化しますと言っていた時期がある。中には米国の投資銀行をモデルとした投資銀行宣言を行っていた銀行もあった。ある時期とは、金融危機以前ということだが、リーマン破綻を契機に米国型投資銀行に対する不信が強まった。そしてそれは今でも解消されていないので、米国では投資銀行マンが余剰となるような投資銀行不況が続いているようだ。日本でも、証券や金融機関の投資銀行業務は冴えない。

 投資銀行業務の中核となるM&Aや上場企業のファイナンスは比較的高水準で、今後ともグローバル対応の強化や復興の為に資本増強需要で先行きは拡大が予想され、先行きは明るいはずだが、少なくとも証券会社の投資銀行部門の収益予想は厳しそうだ。それが何故なのかは、投資銀行業務の本質を考えなければならない。

 投資銀行部門が自らのM&A業務の状況を示すのに、よくリーグテーブルというものを使うが、これはM&A助言を行った案件をカウントする時、対象企業の時価総額を足し、その合計額でM&Aアドバイザーとしてのランキングを競う。これはM&Aで買収金額に合わせて、アドバイザーの成功報酬部分が決まることをベースにしている。しかし、大企業のM&Aほど日本では当事者間で基本的なことを決めてしまう場合が多く、例えば最近では新日鉄(時価総額1.6兆円)と住金(同7900億円)や東証(上場されていないが2~3000億円)と大証(970億円)などがそうだ。これらのケースは各社が複数のM&Aアドバイザーを指名しているが、アドバイザーへの報酬は多くても1千万程度ではないかと言われている。この収益性では、とても複数の人員を半年から1年以上は配置させるような案件ではないが、一旦案件が成立してしまえば、時価総額をアドバイザーのリーグテーブルに加算する。

 ビジネスは売上高ではなく収益性が重要という市場の原則から考えれば、一見リーグテーブルでM&Aを競うのは余り意味のない事の様に思える。しかし、このリーグテーブルを重視することは、アドバイザーとしての宣伝効果以外に、他の部門や他社との協働ビジネスへの波及効果を考えると別の側面が見えてくる。

 例えば、M&A案件の大きさ(時価総額)に係らず、当事者間で基本的なことが決められている案件で、実際の実務的な助言に対する報酬が少ない場合でも、
・M&Aで急遽必要になった資金の調達先を紹介する(他社との協働)
・案件の後で、必要な資本調達に関与する(自社内の他部門への波及)
・M&A後、不要な部門を売却したり、反対に強化する為に買収先を探したりする次のM&Aに関与(M&Aビジネス関与を持続させる)
などビジネスが拡がる可能性が高い。故に、投資銀行部門がリーグテーブルに拘ることの一理はある。

 つまりM&Aにおける投資銀行業務とは、助言を行うことだけの収益性は低くとも、その案件に関連するビジネスを取り込むことで、高収益性を維持できる仕事と言える。その為に、一見繋がらないような事や波及する事を案件に関連付け、全体をマネージメントする必要がある。また企業との持続的関係を維持する努力も必要だ。

 最近の日本の投資銀行業務が冴えないのは、この複数のビジネスを仕組む事について、障害のとなる事があったり(例えば、部門間及び顧客との利益相反問題が整理されていない)、助言活動中心となるバンカーそのものの能力不足(例えば、法規制の強化で以前ほど簡単に仕組めない)のように思える。

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改正産活法で期待したい、大型M&Aの増加と自社株取得 (5月24日)
 株式市場の方はグローバルに調整色が強まっているが、18日に国会で成立した改正産活法(産業活力の再生及び産業活動の革新に関する特別措置法の一部を改正する法律)に期待したい。早ければ7月上旬にも施行を予定されているこの法案の主な目的は2つあって、一つは日本の産業再編を更に進めるM&A促進の為の施策、もう一つはベンチャー・地域中小企業支援の為の施策だが、M&A促進策を取り上げたい。その概要は、以下の様に3つに分かれる。

【事業統合の迅速化の施策=公取委関連】
合併などの企業結合の審査は、独禁法による公正取引委員会の審査が必要だが、企業が事業所管大臣に再編計画を提出することで、所管大臣が産業政策として、海外事業者の投資動向・異業種からの参入状況や可能性・代替製品の技術開発状況などを公取委に情報提供し、その企業結合の必要性を迅速に判断する為に、事業所管大臣に対して公取委との協議を義務付けた。これにより、グローバル競争の激化に対応した、大型のM&Aが実行しやすくなり迅速な産業再編が円滑化されることが期待されている。

【自社株対価のTOBの促進、完全子会社化手続の円滑化の為の施策=会社法関連】
措置は2つあるが、

・一つ目の措置は、自社株を使ったTOBを行う場合、株式の交換比率を決議するだけで済むようになる。会社法上は、今でも自社株を利用したTOBを行うことは可能だが、企業買収なので相手企業をプレミアムを付けて買うことになる。つまり、自社株は反対に相手企業の株主に対して市場価格より安く渡すこと(相手企業株主に対して、有利に発行)になる為、株主総会での特別決議が必要とされている。また、法律論としては、TOBで渡した株式が、もし払込日までの間に値下がりした場合、買い手側企業には現物出資規制上の価格補填責任があるのではないかとの意見もあり、自社株を利用したTOBは会社法制定以来殆ど利用されなかった。これが、今回の改正産活法によりTOB開始段階で、交換比率を決めておけば良い事になる。

・二つ目の措置は、完全子会社手続の簡素化だが、これは今まで買収企業を完全子会社化する為には、TOBを実施して株式を三分の二以上取得し、この後に残った少数株主をスクーズアウトする為、株主総会で普通株式を全部取得条項付種類株(企業が定められた価格で株式を買い取ることが可能な株式)に替え、その後完全子会社化を実施するという手続きが取られていた。これを、TOB実施時点で90%以上の株主が応募した場合、株主総会を開かなくても、応募しなかった株主から株式を買い取れるようにする。
以上の2つの措置によって、企業再編が多様化、迅速化し、積極的な再編が活発化することが期待されている。

【長期資金の調達支援の為のTwo-step-loan(二段階融資)の創設】
 企業の事業再編においては、コア事業の前向き投資と、ノンコア事業の事業転換も併せて行うので、一時的には大規模な資金需要が発生するが、再編企業向けに財政投融資資金1000億円を使って、日本政策金融金庫が金融機関を介して(2段階)長期資金を融資する制度を創設する。

 以上によって、上場企業のM&Aが活発化し自社株取得が本格化することで、最近は日本の取引参加者の閉塞感が強い株式市場に対して、好影響がでることを期待している。日本企業の再生は、日本の資本市場の再生にも繋がると、日本の市場参加者が信じるべき時ではないだろうか。
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MBOでの株主とアドバイザーの問題 (3月7日)
 今年に入って上場企業のTOB(公開買付)は13件(3月4日現在)公表されているが、そのうち半数以上の7件は、企業の経営陣が実質的に株式を取得し、上場廃止を目指すMBO(management buy-out)である。最近のMBOは、一般的には直前時価に対して大きなプレミアムが付いたTOBを実行することが多く、また少数株主を排除していくスクイーズ・アウトが行われていくので、市場や株主のMBOに対する関心は高い。

【増加の背景】
大きな要因は企業が割安に放置されていることだが、内部統制報告者や四半期開示などの上場企業側のディスクロージャーに関する負担が増加していることも指摘されている。また、経営者からみると、上場廃止によって、思い切った事業の再構築を計り、再び企業価値向上を目指す行動がとり易いとされている。一方、金融危機後の回復で経営陣が金融機関等からMBO資金が調達しやすくなっている。

【MBOの主なプロセス】
①TOBを公表し、経営陣は議決権総数の3分の2以上の株式取得を目指す。(定款変更を可能とする為)
②TOB成立後、株主総会を開催し、普通株を全部所得条項付株式に替える定款変更を行う。この全部所得条項は、大部分を保有する経営陣には議決権のある株式を割り当て、その他の残っている少数株主には企業が現金を支払うなどして株式を株主から所得することが可能な株式を割り当てることが出来る。
③企業側が現金TOBに応募しなかった株主を排除して行く為、全部取得条項を行使し少数株主から株式を取得するが、その結果として経営陣の100%子会社となる。
④その結果、上場は廃止される。

【株主の対応】
TOBに応じるか、TOBに応じなければ全部所得条項株としていずれ現金で企業に取得される。この時の価格はTOB価格が参考にされるのが一般的だ。但し、少数株主の権利として、株主総会決議が必要な事項や企業の形態が大きく変わる場合、企業へ保有する株式の買い取りを請求する権利があって、この買取価格が不満な場合、裁判所に価格決定の申し立てをすることが出来る。初期のMBO案件では、TOB価格などを不満とする一部株主がこの権利を利用したケースがある。

【株主としての問題】
MBO対象企業であっても上場廃止するまでは、株式が売買可能で新たな株主となることが出来る。その様な新たな株主が少数株主権を利用する目的に関しては、法制度上の議論もある。また、最近ではTOB公表後に信用取引で3分の1以上株数を取得したケースがあり、株主総会での議決権行使の動向が注目された。

【MBOのポイントとアドバイザー】
最も市場の関心を引くのはTOBの買付価格だが、買い付ける経営陣はその価格算定の根拠を公表すると共に、買付の対象となる企業側も買付価格やMBOそのものに対して意見表明する必要がある。この企業側の表明は、通常買い付ける経営陣を除いて検討され、第三者機関の設置や外部の意見や算定書を判断の根拠にするケースが多い。アドバイザー業務の目的は、MBOプロセスを滞りなく進める手助けをすることだが、その間の関係者間での下記の様な利益相反や、株主・投資家の反応をどの様に調整していくか、その力量が問われている。

・経営陣と既存株主の間のTOB価格を巡る利益相反(正当な株価に対する検証)
・TOB価格公表後に新たに株主になるものへの対策(市場・株主対策)
・株主総会決議や100%完全子会社化での、少数株主の買取請求権行使への対策(少数株主対策)
・MBOプロセス全体における正当性の確保=経営陣・企業・少数株主それぞれに対して(プロセスの法的正当性)

以上のように案件としては相当複雑な利益相反関係が生じることもあって、アドバイザーはそれぞれの専門性が問われ、かつアドバイザーとしての利益相反にも注意を払わなければならない為、最近のMBOを始めとするM&A案件は、複数のアドバイザーが参加するケースが普通になり、かつ其々の専門性がより高いレベルで求められている。


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誰が株主なのか=MBOと信用取引 (2月23日)
 2月15日に行われた日本証券業協会長の定例記者会見では、信用取引における証券会社の議決権行使問題に質疑応答が終始していた。これは、幻冬舎のMBOに絡んだ立花証券の議決権行使が注目されたいた為だが、その概要は次のようになる。

・2010年10月29日、幻冬舎(7843)に対するMBOが公表される。買付者は見城社長の持株会社、TOB(公開買付)での買付価格は22万円(前日終値に対して50.2%のプレミアム)
・2010年12月6日、イザベル(投資顧問業、ケイマン籍)が同社の大量保有報告書提出、保有株数は8347株で議決権保有株数の30.6%。なお、同株式の取得はTOB公表後の11月24日から開始され、立花証券の信用取引での取得であることは開示されていた。ただし、イザベル自体の資金については12月9日の変更報告書であらためて開示されている。
・2010年12月13日、TOBの買付条件を変更、買付価格は22万円から24万8300円へアップ。
・2011年1月6日、TOBの成立、買付株数は15968株で議決権保有株数の58.1%。
(※定款変更は特別決議になるので、議決権の半数以上の行使、及びその3分2以上の賛成が必要)
・2011年1月7日、TOB後の少数株主スクイーズ・アウトの為、TOBに応募しなかった株式を、会社側が実質的に現金で取得することを可能とする全部取得条項付株式へ転換する為、定款変更を行う臨時株主総会の基準日を、同日に定める。
・2011年1月20日、イザベルが提出した大量保有報告書で、保有株数は10198株(議決権保有株数の37.2%)とされる。この時点では、イザベルが信用取引で取得した株を現引きするか注目された。
・2011年2月3日、臨時株主総会の基準日である1月7日時点の株主名簿確認から、イザベルが現引きせず、大量保有報告書で開示していた当該株式の株主名簿上の名義は、立花証券(この分は9727株で、議決権保有株数の35.4%)にあることが判明。(つまり議決権の行使は立花証券)その為、臨時株主総会での立花証券の議決権の行使が注目される。
・2011年2月15日、立花証券は議決権行使せず、定款変更が成立、TOB後の残った株式は、全部取得条項株式へ転換されるため、3月16日をもって上場廃止になることが確定した。

以上の経緯から、この事案について次のようなことが問題と考えられる。

●信用取引における議決権行使の在り方
証券会社が信用を供与する(つまり資金を貸した)買付けで取得した株式は、取引の担保として証券会社名義で管理する。その為、配当や権利などは証券会社自ら処理して、買付価格等を修正する。議決権行使も通常は市場仲介者として中立を維持する為、行使しないのが慣行になっている。しかし、問題提起としては、MBOなどで極端に株主の権利が変更されるような総会議案で、議決権を放棄してしまって、株主や投資家の為に良いのかという事だ。残念ながら、そのガイドラインは未だない。

●ファンド向け信用取引の在り方
最終的な大量報告書によると、この事案ではイザベラの自己資金は約65百万円だが、買付資金(立花証券の融資)は23億2千万円になる。つまり、35倍以上のレバレッジになるが、個人投資家が利用する信用取引とは著しく異なる。若しこの信用取引が、CFDの様に実質的に差金取引で現引する可能性が無いのなら、立花証券は議決権行使に関して自ら行うことを早期の段階で開示する必要がある。ある意味では、この事案で証券会社に議決権があること、また通常は証券会社が議決権行使を行わないことなどは、投資判断に影響を及ぼす重要事項に類するのではないだろうか。
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M&Aというビジネス=大手金融機関編 (2月21日)
 M&Aという言葉ほど金融機関の法人営業に携わる人達をときめかせるものは無いだろう。彼らはディールという言葉を使うが、そのディールは何十というアイデアと提案の中から、企業が興味を示したものを、数か月、場合によっては数年かけて成立させようと努力する。そのM&Aは、ウィキペディアによると次の様に定義されている。
「M&A(Mergers and Acquisitions、(合併と買収)の略、エムアンドエー、エムエー)とは企業の合併や買収の総称。他の企業を取得しようとする際には買収者やその子会社などに吸収合併させるほか、買収先企業の株式を買収して子会社化する手段が用いられることからおよそ企業の取得という効果に着目して合併と買収を総称するものである。」但し、実際のM&Aの形態は多様で、合併・会社分割・株式交換・株式移転・株式公開買付・業務提携などに分かれる。またM&Aをビジネスとする金融機関はファイナンシャル・アドバイザー(FA)と呼ばれるが、個々の役割はディールによってその関与度合いも異なっている。

 そのFAにとって、最も重要視するのはリーグテーブルと呼ばれるものだが、M&Aの対象企業の時価総額で順位付けられる。これはTOBに関与した場合も、単に合併比率を算定した場合も、同じ様に対象企業の時価総額を合算して、金融機関がM&Aアドバイザーとしての順位を競うのだが、時価総額数十億円でも受け取る手数料が数億円の買収案件もあれば、3日に公表された新日鉄と住金の経営統合の様(時価総額3兆円)に当事者間で相当話が進展していて、後は統合比率の算定だけで数千万の手数料に留まるケースもある。あくまでも業界慣行なのだが、M&Aビジネスの収益性からみると余り意味のない場合が多い。

 では何故M&Aアドバーザー達はリーグテーブルに拘るのか。それは一つのビジネスの収益性より次の様なビジネスの波及効果を狙っていると見られる。
○買収案件には、当然買収資金が必要なので、大型の案件に関与していれば、大型のファイナンスに関与できる可能性が高い。
○業界に影響するようなM&Aは、次なる業界内のM&Aを呼ぶ可能性が高い。
○M&A後の対応や、対象事業の再構築にアドバイザーとして持続的に関与できる可能性もあり、企業との長期的な関係を構築しやすい。
これらはM&AのFAという機能を果たすことで、企業から出来るだけ多くの情報とニーズを得ようとすることになる。

 一方、M&Aビジネスにおいて金融機関が最大限の注意と責任を果たさなければならないことは、次の2つである。
●情報管理の徹底=M&Aは長期間インサーダー情報を抱えるので、FAは企業との間で守秘義務契約を結ぶが、FAが証券会社の場合、この情報は法人関係情報として社内の管理部門で登録され、自己売買や銘柄勧誘行為は制限される。しかし、情報の管理上難しいのは、このM&A関連情報がいつ登録され、それはどの位の可能性があり、そして社内の誰が同程度まで知っているか、管理しなければならない事だ。また、M&Aは進展するに伴い関係者が増加してくるが、その関係者も含めた全体の情報管理をどうするかということも、ディールを成功させる為には、全くの企業任せには出来ない。 
●利益相反行為への対応=主な利益相反は次の様なものがある。
・FAは、両方の立場に立って仲介することは出来ない。つまり、買い手と売り手は当然利益相反するので、どちらかの立場で助言する。
・自らが株主や資金の貸し手でいる場合、利益相反することもあるので、企業側にその可能性を伝えなければならない。
・もし競争相手のM&Aに別途関与している場合、アドバイザーとしての役割は果たせない。

結論を言うと、大きな組織ほど、情報管理と利益相反対応は難しい。 
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株主とは誰のことを指すのか (12月15日)
  期末を越えて株式を売却し、その後株主総会の議案と招集通知が送られ、議決権の行使に違和感(その時点では、当該株式を売却してしまっているので)を感じながらも、配当を受け取ると、何だか少し嬉しくなってしまう。そんな感覚をもつ個人投資家は多いのかも知れない。配当を受け取ることは、前期の利益の配分なので、多少手続き上の時間もかかろうが、最早自分は株式を売却しているのに、新しい取締役を選任したり、定款変更に賛成・反対したりすることに、多くの個人投資家は意味を見出せない。
 そもそも株主とは誰のことを指すのか。難しい会社法(旧商法)の議論はさて置いて、株主とは株式を保有している人を指すが、株式が昨年1月から完全にペーパレスになり電子化してから、技術的にはリアル・タイムで株主を判明することが出来る。つまり、新たに株式を購入した時点から株主としての権利を行使することが可能な部分がある。取り上げたいのは、組織再編やMBO(経営陣による会社買取)・M&A事案に係る株主総会議案に対する株式買取請求権の行使だが、“今後の企業法制のあり方について”(法制審議会資料;経済産業省)によると、次のようなことが問題になっている。

・例えばMBOの場合、株価が継続して下落傾向にあった会社がMBOでTOB(公開買付)を実行し、その後のスクイーズ・アウトで残った株主に現金を渡し100%子会社化する場合、TOB価格と同一の価格で現金化する場合が多い。この時、TOBとスクイーズ・アウトの間に、新たに株式を取得し株主となったものが、スクイーズ・アウトの現金化価格を不満とし、株式買取請求権を行使し、裁判所に対して価格決定請求の裁判を起こすケースがある。新たな株主にとって、経済的不利益は無いはずなのだが、元々のTOB価格(TOB時点では、このものは株主ではない)が低すぎるとして株主買取請求権を使うのだ。
少しややこしいのが、長い間株主で経済的不利益を被っている株主も同様の権利を行使する場合がある。一方はMBO前からの株主、一方はMBOの為のTOB後の株主ということになるが、現在は同様の権利内容となっている。

・上記の株式買取請求権の買付価格が裁判所で決定されて実際に株主に支払うまでの間、会社側は買取請求を起こした株主に対して法定利率の6%を支払うが、この事が実質的資金の高金利運用になり、買取請求を誘発する状況にある。

・また買取請求制度が別の目的で利用されるケースとして、本来目的であるはずの総会議案等への反対ではなく、纏まって株式を保有する特定の株主から、会社が株式を時価より高く買取る目的で利用したものが複数あった。通常、会社が特定の株主より自社株式を買い取る場合、時価若しくは数%のディスカウント価格でToSTNeT等を使って買い取るが、この様なケースで時価と比較して相当高い価格であった。(この部分の記載内容は筆者追加)

 いったい権利を行使すべき株主とは誰なのか。権利の行使目的や権利内容によって異なるべきではないだろうか。その時点で経済的影響を受けるものが、その議案及び議案に係る権利行使の対象となる株主で良いのではないだろうか。紙の株券の時には、物理的制約があって便宜的に決めたことが、完全ペーパレス化によってリアル・タイムで株主を特定することが可能になったので、決済制度の進歩に合わせた株主の権利行使の仕組みが待たれる。
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MBO増加の可能性を易しく考える (8月13日)
 上場会社のMBO(マネージメント・バイアウト)は昨年度11件あったが、12日はJSTと日清医療食品の2件のMBOが発表された。両社とも事業領域の市場が縮小しており、抜本的な事業再構築が必要となったことから、MBOを行うという。そのMBO要件の基本的なことについて考えてみたい。

【MBOの形態】
言葉のとおり経営陣による企業買収になるが、その経営者が旧か現もしくは新かの違いはMBO資金の出所による。通常MBOは、市場価格に対して3~5割程度のプレミアムをつけTOB(公開買付)するので、経営陣は纏まった資金が必要になる。このMBO資金については、嘗てはプライベート・エクイティ・ファンドなどの出資を中心にしたものが殆どだったが、ファンド出資だと投資収益率が問題になるので、比較的短期間の再上場を目指すことになり経営者へ圧力が強まりがちだった。
これに対してオーナー一族がある程度の比率株式を保有し、かつローンの調達力がある場合、オーナー一族の100%出資という形態も出ている。この場合、企業のガバナンスが効きづらくなるという欠点があるが、ファイナンスコストも安く、再上場の圧力もない。
ちなみにMBO資金はローンで賄えるならそれに越したことはないが、企業価値をベースにそのローン金額を制限されることがある。(業種や企業内容によって異なるが、EBITDA倍率等を用いた企業価値の半分程度とされるのが一般的)経営陣が用意する出資資金が不足した場合、ファンドの出資を受けなければ、主要な取引先の出資や、議決権がない代わりに高配当を約束する優先株でのメザニン対応などのケースも増えていきている。

【MBOの条件】
MBOの必要十分条件は2つあるが、一つ目は株価が安いことだろう。企業が買収リスクに晒されているとの経営者の危機感強まるということもあるかも知れないが、大幅なプレミアムを払ってまでも企業価値はあると思わなければ、経営者はMBOに動かない。今の日本の株式市場の環境なら、MBO増加の余地が大きい可能性がある。
もう一つは、経営者が上場のメリット<上場のデメリットと判断することだ。上場の最大のメリットは、資本調達が容易になることだが、エクイティファイナンスが出来ない、もしく必要なければ、上場メリットは大きく縮小する。それでも株式の流動性があるとか、株式市場から求めるガバナンス態勢により経営規律が働くとか、信用力が保たれたり、従業員のモチベーションが維持できるといった副次的メリットはある。しかし最近は内部統制報告制度や四半期開示などもあって上場維持のコストも上がっているし、何よりも低株価のまま市場で放置されていることで、敵対的買収リスクも高まっている。またIRやIFRSに向けた態勢整備をしていく中で、更なるコスト増加も見込まれる。上場のデメリットを感じる企業が増える傾向にある。

【MBOの本源的意味】
 上記に上げた2つの必要十分条件は、あくまでも条件であって目的ではない。株価が安いので買い戻すだけが目的なら、自社株買いで安いときに買っておいて、再び成長するときに市場から資本調達すればいい。また、上場コストが高負担になるような銘柄は本来退場すべきとの投資家サイドの考え方もある。しかし、企業が再生しようとする時、株価や情報開示という圧力から一旦切り離されなければ思い切った手が打てない場合があるのも事実だ。その際、ステークホルダー間で利益相反することも起きるのでMBOは難しいといわれるが、唯一ステークホルダー間の収斂された目標があるとすると、それは企業価値の向上ということになる。MBOは、その企業価値向上の為に非上場化という処置をステークホルダー間で受け入れる環境にあるか経営者が判断することから始まる。

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インサイダー取引とTOB (7月29日)
 パナソニックによる三洋電機とパナソニック電工の完全子会社化の報道がなされ、両社に対するTOB期待も一気に高まったが、TOBに関する情報は市場参加者なら誰しも知りたい情報だ。市場参加者でなくとも未公開のTOB情報を知ったなら、市場に参加したくなるのが人の常かも知れない。但し、普通の市場参加者なら、TOBに限らす、公表されていない重要事実を知って株式を売買することがインサイダー取引という犯罪行為に繋がる事を知っている。金融商品取引法に違反する犯罪行為として裁かれる事に加えて、課徴金というペナルティーも課せられる。TOBは、通常なら2~3割、MOBなどのケースでは5割前後のプレミアムがつくこともあって、対象株式が買いだと分かり易いが、昨年のJALの救済の可能性を巡る情報の錯綜の様に、時には分かり難い事もインサイダー取引の対象になる可能性もある。

 そのインサイダー取引に対する証券取引等監視委員会(SESC)の課徴金勧告は、平成21年度は38件と前年度に比べ倍増している。特にTOBに関しては前年度の3件から13件に、民事再生・会社更生に関するものも過去殆ど無かったが8件に増えている。
 インサイダー取引の勧告が増えているのは、SESCの体制が強化されていることもあるが、M&Aやそれに伴うTOB件数の増加が背景にある。また、M&Aビジネスの特性として時間がかかる(少なくとも関係者による取組みが始まってから3ヵ月、長ければ1年以上)ので、その進行時間の経過とともに関係する人が増えていくこともTOBに係るインサイダー取引のリスクを増加させる要因となっている。

 この様なTOBとインサイダー取引の関係について、SESC事務局が分かりやくす取り纏めた下記の資料があるので、金融機関のM&A関係者は一読すべきだ。
"株式公開買付等に係る実務とインサイダー取引のリスク"

TOBに係る実務者毎にインサイダー取引のリスクの高低を示しているのは興味深いが、要は関係者間においてM&A及びTOBに関する情報をキッチリ管理するということだ。M&Aのプロなら当然とも思われるが、そのM&Aのプロ中のプロである証券会社のM&A部門の専門家でも、5社のインサイダー取引に関与していたことは、業界にショックを与えた。TOBの実行者(公開買付代理人)、M&Aのアドバイザー、企業へのコンサルティングという情報の機密性の高い業務を顧客企業の為に行っていたはずだが、それでも個人のインサイダー取引を防げなかった。
どの様なプロでも関与しうるインサイダー取引だが、SESCは事前阻止する為の対応策として、次の事を示している。
① FA(M&Aのファイナンシャル・アドバイザー)の注意喚起等の役割
 FAはM&Aにおいては当初から案件に深く関与する。証券会社のFAは、他に利益相反する部門があったり、市場取引部門を持つので、本来は案件の情報管理が最も厳格だ。そのFAは、案件の各段階における情報管理の為の注意喚起の役割を徹底すべきとしている。

② 情報伝達範囲・内容の限定
証券会社がFAの場合、TOBが近づいてくるとリテール部門で一部内容を伝達し始めるが、個別名を明かさない工夫や、銀行・株主・取引先などへの伝達内容・範囲の限定が必要としている。

③ 情報管理態勢の強化
必要に応じて関係者に情報を伝達する場合、業種ごとに情報管理態勢が異なることを認識して情報伝達先の情報管理徹底を図る。例えば、TOBの目論見書を事前に印刷する業者が第三者に業務委託するような場合。

④ 守秘義務契約締結の奨励
守秘義務契約を出来る限り提携していくことが有益。

⑤ 経緯報告書の内容の充実
案件に関与するものの関与内容を明確にする経緯報告書の記載の充実は、関係者の情報管理の徹底の為にも有効で、インサイダー取引の未然防止効果もある。

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M&A等組織再編促進の為の会社法改正案 (7月4日)
  現在、法務省法制審議会で行われている会社法の見直しで、6月23日経済産業省より改正案“今後の会社法制の在り方について”が示されているが、その中から“企業の組織再編・M&Aの支援”に関するものをその現状の問題点とともに取り上げてみたい。

【提案1:自社株対価TOBの利用促進】
・現在の会社法でも、自社株を対価として相手企業の株式を取得することは可能だが、現行の手続きだと、相手の株式をプレミアムを付けて買う為、自己株の方は相対的に安くなることから、有利発行の総会特別決議(実際は金庫株を安く渡すことを想定)が必要になる。又、自社株をもって相手企業に出資することにもなる為、現物出資規制により検査役の調査等が必要にもなる。つまり手続きが複雑で、かつ法的リスクも大きいので、ほとんどこの制度は使われていない。
・現在、企業において消却されずにある金庫株は13兆円に達しているが、M&Aに向けた活用が課題になっている。
・そこで、自社株対価TOBの利用を促進する為、次の対策を行う。
① 現状の株式交換と同様に、自社株対価TOBの場合も検査役の調査を必要とせず、買付会社の役員や応募株主は補填責任を負わない。
② 自社株対価TOBの場合の買付価格決定方法として、発行日の時価若しくは算式で足りることとする。

【提案2:スクイーズアウト、セルアウト制度の創設】
・現状のMBOや完全子会社化で用いられる少数株主の締出し(スクイーズアウト)は、TOB後に全部取得条項付種類株を使ったものが多い。このことは、最初のTOBに応じなければ、次の全部取得条項付種類株の条件で不利に扱われるかもしれなという株主への圧力になる。一方、この全部取得条項付種類株の買取り条件に関する株主側の不満もあり、裁判事例も多くなっている。
・その為、手続きを簡略化し、法的安定性のある迅速な仕組みとして、次の制度を導入する。
○セルアウト制度:TOBの結果、買付者が例えば3分の2以上取得した場合、応募しなかった株主でも、ある一定期間は、TOB価格以上で買取り請求できる制度。総会決議不要。
○スクイーズアウト制度:TOBの結果、買付者が例えば6分の5以上取得した場合、完全子会社化する為、TOBにもセルアウトにも応募しなかった株主に対し、TOB価格以上で売り渡しの請求できる制度。総会決議不要。

【提案3:株主の持分権に着目した組織再編手続きの合理化】
・M&Aなど組織再編に係ることは、株主の持分権の影響が少ない場合でも、株主総会決議や株式買取請求など厳格な株主保護手続きが要求される。
・一方、大規模な第3者割当など、既存株主に大きな希薄化の影響がある場合、取締役会決議限りで実行が可能で、株主買取制度もない。
・よって、株主の持分権への影響を基準に、次の様な制度の見直しを行う。
※現金株式交換や無対価合併、分社化して完全子会社化する会社分割など、株主持分権に直接的影響が無い場合、株主総会の承認を不要とし、株主買取請求制度の適用除外へ
※一定以上の希薄化が生じ、支配権の異動が生じる場合の第3者割当増資などについて、独立役員が過半数以上の特別委員会での承認手続き、株式買取請求制度の整備で株主を保護へ

【提案4:会社による選択的対価制度の創設】
・現在のTOBや株式交換制度は、対価として現金・株式・現金と株式の組み合わせの中から、同一の方法を買収株主全員に用いなければならないが、海外の制度で異なる場合、手続き面で煩雑になったりコストがかかるケースがある。
・これを、買収会社側が株主の属性による区分に応じて、対価の種類を選択できるようにする。

【提言5:事業譲渡の際の許認可承継】
・現状は会社分割と比べて、事業譲渡による許認可の承継が限定的。
・迅速な組織再編を可能にする為、事業譲渡のうち、相当程度の生産性の向上を図るために行われるなど一定の条件を満たす場合、全部又は一部の許認可の承継を可能とする。

【提言6:株式買取請求権制度の見直し】
・提言6-1株式買取請求権が発生する組織再編類型の見直し=例えば、簡易合併や簡易株式交換では、株主持分権への影響が少ない為、株式買取請求権をなしとする。
・提言6-2株式買取請求の濫用防止=請求者適格の範囲の見直しで、組織再編公告後の株式取得者の買取請求を認めない。また、現状では買取請求手続きの長期化で法定利率が6%と高いが、これを見直し、供託制度を制定する。

【提言7:商事・金融高等裁判所(仮称)の創設】
(この件で、筆者は特にコメントがありませんが、M&Aや金融に係る専門的な判例の集約や整理が行われるのなら、市場関係者としても好ましいいと感じます)

 以上に関する筆者の率直な感想は、企業の組織再編の活動を活発化するのに法制度・手続きを簡素化するのは好ましいことに思えるが、買取請求権は、株主の権利であるとともに、経営への牽制機能も果たしているので、この制度の簡略化は、単純には評価出来ないと感じる。
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今日的買収防衛策の意味は (6月10日)

会社は誰のものかという議論を、もう10年来している。確かに上場会社であっても会社は株主のものだけで無いことは世間の一致するところだが、株主としての最低限の利益が守られなければ、資本市場は成り立たない。その株主や投資家の利益を守る仕組みが、コーポレート・ガバナンスの強化で、それを対外的にキッチリ示すのが、ディスクロージャーの充実ということになる。
 そのコーポレート・ガバナンスの目的の一つに、買収防衛策への対応があるが、もう真近に迫ってきた6月下旬の株主総会で注目される議案だ。この6月総会以降、株主総会での議決権の行使状況を原則開示(臨時報告書で)しなければならないが、株主の投票結果の公表を前提にした企業側の買収防衛策への対策が注目される。

 そもそもの買収防衛策は、敵対的買収に対するライツ・プランの発動を前提にしたものだが、このライツ・プランは、ライツ・イシュー(株主割当増資)と同じく新株予約権を株主に付与する。違いは、企業が敵対的買収者と認定したものは、このライツが行使出ず、結果4割買付けたと思った株数が保有比率だけ2割や1割まで低下させてしまう。
買収防衛策は、2005年から企業に本格的に導入され始め、2007年には年間導入企業数が234社とピークとなり、昨年末時点で567社(レコフ調べ)が導入しているが、これらの買収防衛策は、有効期限を3年間としているものが多く、今年は株主総会で再提案時期に当たる。注目されるのは買収防衛の再提案内容と、それに対する機関投資家などの投票動向だ。上場会社の15%近くも導入している買収防衛策だが、TOBルールの改正などによって、目的も分からず突然3分1以上保有されるリスクが減じたことから、最近は廃止する企業も目立っている。

買収防衛策の内容については、いくつかのパターンに分けられるが、株主側からみたポイント概要は以下の様になる。
●敵対的買収者として認定するプロセス
●ライツ・プラン(株主への新株の付与)発動の条件
●敵対的買収者への対応(金銭での買い戻し条件等)
1番目は、誰にとって敵対的かということを明確にするプロセスであるが、誰が敵対的買収者として判断するかということが重要になる。2番目は、ライツ=新株予約権の仕組みとその実際の付与は、他の株主にも負担を強いることになるが、その理由付けとその理由に沿った新株予約権の設計が出来ているか。3番目は、防衛することで会社の金銭的資産が流出して、企業価値を減じる可能性があることに、どう配慮されているか。

 買収防衛策の導入に当たって、企業側の指針としては、2008年6月に企業価値研究会に纏められた“近時の諸環境の変化を踏まえた買収防衛策の在り方【案】”があるが、買収防衛策の目的は、企業価値、ひいては株主共同の利益を守る為とし、経営者による買収防衛策の運用について、以下の行動のあり方を示している。

①株主共同の利益の確保・向上に適わないにもかかわらず、株主以外の利害関係者の利益に言及することで、買収防衛策によって保護しようとする利益を不明確としたり、自らの保身を目的として発動要件を幅広く解釈してはならない。

②被買収者の資産を買収者の債務の担保とすることや、被買収者の資産を処分し、その処分利益をもって一時的な高配当をさせることが予定されているなど、それのみでは当該買収が株主共同の利益を侵害するとまでは言い難い理由のみをもって、買収防衛策の発動が必要であるとの判断を行ってはならない。

③買収提案の検討期間をいたずらに長期なものとしたり、意図 的に繰り返し延長することによって、株主が買収の是非を判断する機会を奪ってはならない。

④買収提案が株主共同の利益を向上させるものか否かという観点から、買収条件、買収が株主共同の利益に与える影響等の買収提案の内容や、買収者の属性・資力等について、真摯な検討を行わなければならない。

⑤買収条件の改善により当該買収提案が株主共同の利益に資するものとなる可能性がある場合には、買収条件の改善に向けて、買収者との交渉を真摯に行わなければならない。

⑥株主共同の利益を最大化させる買収提案であると判断した場合には、株主総会で株主の意思を問うまでもなく、直ちに買収防衛策の不発動を決議しなければならない。

⑦株主が買収の是非を判断できるよう、買収提案に対する取締役会の評価等について、事実に基づいて、株主に対する説明責任を果たさなければならない。 

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新株予約権の使い様 (4月8日)
 上場会社の400社以上が導入している買収防衛策は、今年すでに50社以上が廃止を決めている。この買収防衛策は、一時ライツ・プランと呼ばれたが、敵対的買収者が現れた際、新株予約権を使って、買収者の持分を実質的に希薄化させようとするものだ。例えば、敵対的買収者が株式を20%取得した後、会社側は買収者以外に新株予約権を付与することで、買収者の持分を10%以下に低下させてしまうことが出来る。
この新株予約権は、実に様々な企業行動の局面で使われていて、今までは既存株主にとって余り良いイメージがなかった様に思われるが、最近、株主に優しい増資方法として注目されているライツ・イシューも、株主全てに新株予約権を無償で割り当てるものだ。
新株予約権とは、これ以外にも多彩な使い方があるが、このことを少し整理してみたい。

【新株予約権の定義】
株式会社に対して行使することにより当該株式会社の株式の交付を受けることができる権利をいう。(会社法第2条21)

【新株予約権の基本的な構成】
①何株の新株を払い込む権利か
②いくらで新株を受け取ることが出来るか
③いつからいつまで有効か権利か
④この権利そのものは、いくらで発行するのか
基本的構成要件は以上だが、これ以外にも権利が終了した時どうするか、権利の行使する場合の条件等を付けるかなど、新株予約権の設計は相当な自由度がある。つまり、発行者である企業と、引受者間の合意があれば様々な新株予約権発行のバリエーションがあるということになる。このことは、株主には分かり難く、不評の一因にもなっている。特に、②と④の関係で、その発行が有利になっているかどうかは個人株主には一目して分かり難い。

【使い方】
○ファイナンス手段
資金調達の場合、株式と同様に公募と第三者割当があるが、単独で使われるケースは少ない。通常は、公募では社債とセットになる所謂CB(新株予約権付社債)としてか、第三者割当増資とセットとなるケースが多い。公募であっても第三者割当でも、ここで問題になることは②=行使価格が一番多く、④との関係で株主からみて有利発行なら、株主総会決議になる。新株予約権の行使を促す方法として、一定期間後に株価が下落した場合、その時の時価より安く②を下方修正する方法も取られるが、この方法は株主からみて更に有利かどうか分かり難く。時々問題となるMSCB(行使価格を下方修正するムービング・ストラクチャーのCBという通称)は、買付け者の裁定売り(新株予約権を持って、株を空売りすること)が予想されるので、株主には最も不評だ。但し、企業再生過程で使われた場合もある。

○M&Aなどの推進策
 上場企業のM&Aなどにおいて、買い手の意向に沿った事業推進などの状況を見ながら必要資金を供給する場合、この新株予約権が買い手に割当てられ、権利行使が段階的に実施されていくケースがある。また、買収の対価として、欧米では現金以外に自社株式や自社株式を対象とする新株予約権が売り手株主に支払われる場合もあるが、日本ではまだ一般的な使われ方とはなっていない。

○買収防衛策
 敵対的買収者の保有する株式の希薄化を図る為に、新株予約権を株主に割当て、敵対的買収者は権利行使しにくいような行使を制限する条項を付ける。実際に発動されたブルドックのケースでは、敵対的買収者に割当てされた新株予約権部分は、権利行使出来ないが、会社側が現金で買い取るスキームになっていた。この結果、会社が買収から新株予約権を買取り、その分の大量の配当可能利益が社外流出したことに関しては議論を呼んだ。買収防衛策は、敵対的買収者の安易な行動を防ぐ意味はあるが、実際に発動されると、会社法上(買収者も株主の権利がある)の問題も多く、様々なケースでは新たな判例に頼りかねない場合もあるとの見方が一般的に思う。

○ストック・オプション
 上場企業での一時の流行は下火になったが、役社員に新株予約権を与えるのがストック・オプションだ。当初は、インセンティブ・プランとして導入が相次いだが、元々はベンチャー企業など報酬の対価に使うのが正しいのだろう。最近は、機関投資家などのチェックも厳しくなり、会社側が役社員へのインセンティブと報酬のあり方、そして付与する新株予約権の価値と行使の条件をキチンと見るようになってきた。

○何らかの対価としての支払い
 役員の退職金積み立てを止め、その分、行使価格を1円にして新株予約権を付与する事も行われるようになっている。また、コンサルタントなどに成功報酬的に付与される場合もある。ただし、この場合も、付与する新株予約権の価値の認識と、支払う対価のバランスをどう会社側が考えるかが問題になる。

 以上の様に、いろいろな使用目的にそって対価として使われている新株予約権であるが、株主に割当てる以外は、対価として使う側の会社経営者が、その新株予約権のバリューを正確・公正に把握し、それを株主に説明する責任がある。
 

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靴ひもと電話 (2月19日)
冬季オリンピックもたけなわで、バンクーバーから伝えられる日本選手達の映像は、勝っても負けても大きな感動を与えてくれる。男子フィギュアスケートでも、3人の演技は其々に良かったが、靴ひもが切れて演技が中断した選手もいた。不運とか悲劇という報道も目立つが、アスリートならリングに出る前から試合は始まっているのは当然だし、このことは本人が一番自覚しているだろう。

 一方、KDDIによるJCOM(ジュピターテレコム)出資問題で、当初KDDIが実質的に37.8%保有する出資スキーム(資産管理会社を通じて出資する分は、34.1%)が、3分の1以上を保有する場合は少人数(10名以内)であってもTOB(公開買付け)を実施しなければならないTOB規制に抵触するとして、31.1%の保有に減じた。このことは、金融庁とKDDIの話し合いで決定された。
 KDDIが、一旦出資を公表した後、金融庁の調査によって、出資比率を引き下げたことで、法規制に記載がない資産管理会社スキームでの保有まで規制するのかといった、批判が一部にあるようだが、今回の件は、金融庁の対応を全面的に支持したい。
確かに、TOB規制には、今回の出資スキームの様に、株式を保有する資産管理会社を買収する場合の記載はないが、間接的に保有する場合でも、実質的に議決権をKDDI側が行使出来る場合は、株主総会で3分の1以上の議決権を行使する拒否権を、KDDIが握ることが出来る。TOB規制の目的に照らすなら、当然、今回の出資スキームも、TOBを実施すべきだったというのが、資本市場としての結論ではないだろうか。

 元々JCOMは、1995年に住友商事とリバティー社(今回、KDDIに株式を譲渡する)が合弁事業として設立し、2005年にジャスダックに上場している。今回のKDDIの出資は、合弁契約解消に伴うリバティー社持分の取得になる。出資スキームが、複数の資産管理会社を通じて行なわれるのは、この合弁事業進展の過程で、出資比率や事業戦略上の問題があってのことだ。KDDIの取得に関して、出資スキームの創意・工夫があったようには、公表文の範囲では分からないが、せめてTOB規制に関する事前確認を、証券会社・弁護士を通じて行うべきであった。
今回の出資案件では、JCOMが上場会社である以上、当然ファイナンシャル・アドバイザーとして投資銀行業務を行う証券会社が付いていると思われるが、もしそうであれば、資本市場のプロとしては甚だ甘い判断だと言わざるお得ない。

市場のルールは、形式要件さえ守っていれは、後は自由に振舞える時代では最早ない。証券取引法から、金融商品取引法に替った時、証券会社等の行為規制に関しては、あれ程ナーバスに対応した証券会社だが、どうもTOB規制など投資銀行業務に関するルールの判断では、時々エラーが出るように思う。
今回の件も、大きく言うとM&Aに関する助言なのだろうが、いまやM&Aアドバイザーは、証券会社でなくとも誰でも出来る。しかし、M&Aの対象が上場会社の場合、資本市場に向き合った助言行為が必要になり、法律事務所や会計事務所では判断が難しい事象も発生する。
 証券会社は、上場会社が関係するM&Aの場合に、他のアドバイザーに比べてこの様なアドバンテージがあるのだから、その助言内容も資本市場ルールの目的に沿ったものでなければならない。また、企業に対して、資本市場利用の利便性を図るとともに、ルールの目的を認識させる必要もプロとしてある。

 その様なプロフェッショナルを育成してこそ、投資銀行としての強みが発揮されると、日本の証券会社にも期待したい 
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TOBルールの考え方、金融庁Q&Aより (2月16日)
 TOB(公開買付け)ルールは、資本市場における手続きなので、市況環境やその時の企業のあり方によって、時代とともにその対応が変わっていくべきものなのだろう。その意味で、最近注目されているJCOM(ジュピターテレコム)株の大株主間の株式移動に係る動きは、TOBルールの目的を改めて考えさせてくれる教材になっている。
2月15日、住友商事は、以下の内容のJCOM株式に対するTOBを公表した。
・公開買付株数:下限は、459,147株。上限は875,834株。(応募多数の場合は、比例案分の方法による)
・買付け価格:139,500円(2月12日株価92,900円の50.16%のプレミアム。但し、1月25日に公表されたKDDIによる同社株式の大量取得時に株価と同じ)
[算定根拠は、ゴールドマン・サックスの財務分析による。
市場株価平均法:84,039円~91,141円
類似会社比較法:83,418円~131,742円
DCF法:113,995円~189,950円
類似取引比較法:141,030~145,240円]
・公開買付期間:3日3日~4月14日(30営業日)
・買付代金:1221.8億円
【TOBの背景とTOB完了後の変化】
現在、JCOMはリバティー社と住商の合弁会社が57.46%を保有しているが、この保有株は合弁事業契約終了によって、2月18日に両社に配分される。(リバティー社は33.71%分、住商は23.75%分)
先にKDDIが公表したのは、リバティ社分(元来リバティ社の子会社が保有する分も含めて)37.37%分について、リバティー社よりKDDIが譲渡されるということだったが、金融庁よりTOBルールの指摘で、31.1%(2月19日取得予定)に減額すると公表されている。これに対して住商は、現在保有分の3.66%に加え、配分される株及びTOBでの取得で、40%までの保有比率を目指す。

 一方、金融庁より“株式等の公開買付けに関するQ&A”追加案が示されている。内容は、TOBルールの一般的な考え方を示すものだが、今までの11の設問に対して、新しく26の設問が加わっており、年間70件以上ある様々なTOBの実務に応えようとするものだ。

上記の件に関係するとみられる設問は2つあって、
【3分の1超を所有する資産管理会社の株式取得時、TOBルール上の留意】
形式的にはTOBルールに該当しなくとも、その資産管理会社が株式等の買付けの一形態に過ぎないと認められる場合は、TOBルールに抵触すると考えられる。
【組合での株式保有で、解散時に株式が分配される場合】
・自らの選択か若しくは協議により現物株式での分配を選択する場合
・近いうちに組合が解散され、株式で分配されることを知って組合に出資する場合
など、自らの意思で株式を所得すると認められる場合は、TOBルールに抵触すると考えられる。

となっている。また、TOB実行者と関係者の定義を確認するものもあり、特別関係者(買付対象者と株式の持分を加算)については、TOBの買付者への出資が20%超ある個人は、買付者が組合である場合でも、その親族も含めて特別関係者として見做されることも確認されている。
その他、主要な設問としては、TOBの撤回に関する条件に関するもの、TOB買付者と大株主間のTOBに関する契約に関するもの、MBOの際のTOB価格や利益相反に影響のある事情の公表に関するもの、TOB成立により対象会社の取締役が報酬を約束された場合の問題等、あって、TOBの増加に伴い、様々なケースの問い合わせが金融庁に寄せられていることが窺える。
 但し、金融庁がQ&Aの前提で示しているとおり、TOBルールも法制度の趣旨を踏まえて、実質的に解釈・適用されると考えるべきなのだろう。

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業界のインサイダー取引に関して考える (2月8日)
 深刻なテーマではあるが、敢えて取り上げた。何故、深刻なのかというと、インサーダー取引はインサイダー情報が無くならない限り、無くならないからである。逆説的な物言いで、読まれている方々に失礼したかもしれないが、法規制が強化されても、違反や犯罪が確率論的に起きる様に、インサイダー取引も決して皆無にはならない。その前提で、業界や市場に起きる事象を捉えた方が、理解しやすい。またインサイダー取引は、スピード違反や飲酒運転などの交通違反と同じ様に起き易い違反行為と捉えた方が良い。そのインサイダー取引対象者が、例え業界のプロと言われる人々であっても、同様である。
 市場の取引参加者が欲する重要情報としては、業績予想の大幅な変更以外は、M&A関係かファイナンス関係になるが、この重要情報の未公表のものがインサイダー情報となる。M&Aは、TOBに係るケースが多く、当然大幅なプレミアムが付くので買い情報、ファイナンスは大幅な希薄化の場合には売り情報、と見られやすいが、M&Aにしてもファイナンスにしても、実務が専門的になるので、多くのその道のプロが関与していくことになる。最近のインサイダー取引摘発では、このプロと言われる人々の取引事件が明らかになっている。

 M&A案件に係る専門性の高い弁護士・公認会計士、証券会社のM&Aの実行部隊、届出書等の印刷を行う専門の印刷会社社員、法定広告に関与するマスコミ等、資本市場に関係するプロフェッショナル達によるインサイダー取引だが、プライベート・エクイティ・ファンドのパートナーの関与する事件が、今週号(100号)の日経ヴェリタスに取り上げられている。

この事件は、ユニゾン・キャピタルの元パートナーが昨年10月に証券取引等監視委員会(SESC)の強制捜査を受けたものだが、ユニゾン側は、事件の真相の究明を第三者委員会に委ね、12月末にはこの第三者委員会の報告により社内体制の整備など再発防止策を公表している。記事は、この報告書をもとにユニゾン側が自らのファンドに投資する出資者に2月5日説明会を行う際に配布された報告書内容によるものだ。その内容は、元パートナーの2002年から2009年までの株式取引は100銘柄約7500件信用取引を中心に行われ、ユニゾンが投資に関与した約40銘柄については、インサイダー取引の疑義があるというものだ。

 ここでインサイダー取引が何故か明らかになるかというと、証券取引等監視委員会による日常的市場監視活動によるが、ポイントは内部通報を含む情報収集活動と取引所などからの取引審査の2つになる。その最近の状況を見てみると、インサイダー取引関連でSESCに寄せられている情報は、昨年の4月から12月までで315件、SESCが実施した同期間の取引審査は477件ある。これらをもとに、SESCは犯則事件の調査や課徴金調査を行い、証券会社等への勧告や建議、若しくは違反者の告発につながっていく。
 通常、M&Aやファイナンスを行う証券会社の実務部門は、担当銘柄もしくは個別株の売買が禁止されるし、もし個別銘柄に個人的に投資していても3~6ヶ月の保有が義務付けられていて短期売買出来ない。勿論、信用取引や個別株オプション取引については、証券会社の役社員が禁止されている有価証券の投機的売買に該当する可能性があるとして、投資銀行業務を行う証券会社では、全社員が禁止されている。

 筆者は、ここまで個人の投資活動を縛る事が良いとは思わないが、M&Aやファイナンスに関与するプロフェショナルを抱える組織は、案件に対応するプロ達の株式投資状況を、内部管理として把握すべきだと考える。
今回のユニゾンの場合、普通の投資銀行とは異なり、この内部者の株式投資に関する報告システムがなかったが、M&Aやファイナンスに関与する弁護士・会計士・ファンド関係者やその他専門家達も以下のシステムに加入させて、案件への関与と個人の投資活動の隔離を明確にすべきだと思う。

【J-IRISS(ジェイ・アイリス:Japan-Insider Registration & Identification Support System)】
不公正取引等の防止及び市場の透明性・公正性の維持の観点から、日本証券業協会が構築するシステム。登録情報は、証券会社の顧客口座と定期的な照合が実施され、照合の結果、役員の口座であると確認された証券会社の顧客については内部者登録カードが整備され、インサイダー取引の防止等に活用される。
~日本証券業協会HPより

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KDDIのJCOM株取得問題から、改めて考えるTOB規制 (2月3日)
  この業界で、企業のファイナンスやM&Aなどの投資銀行業務に携わるものにとって、KDDI・JCOM株取得問題は、またかといった想いに囚われる。JCOMに資本参加するKDDIの行為が、TOB規制に触れて問題がどうかは、金融庁が判断することだが、TOBに係る問題は、時としてTOB制度の隙をつくように起きる。ファンドが、通常なら5営業日以内に報告しなければならない大量保有報告制度で、三ヵ月に1度の報告で済むファンドの特例制度を利用して、その間に市場外で大量に買い進んだり、企業がTOB規制を免れる為、実質的には相対取引に等しい取引所の立会外取引(ToSTNeT取引)で、発行済株数の三分の一以上を買ったり、その当時のTOB・大量保有報告制度でのルール上では規制に抵触しないが、そもそもの立法の目的に照らすと疑問が残る行為があった。
 勿論、法規制・ルールは、時代や環境の変化に沿って変化するだろうが、そもそもの目的の正しさがいきているなら、その目的を守る為に再整備される。TOB規制については、村上ファンドやライブドアなどの買付け行為を受けて、2005年に以下の様な見直しを行っている。

○市場と市場外取引を組み合わせた取得などの脱法的買付けを規制するため、短期間に三分の一以上所有する場合は、TOBの対象となることを明確化した。
○株主や投資家が、TOBの条件について十分熟考の上判断できるよう、対象会社による意見表明の義務化、TOB買付けに対する対象会社の質問機会の付与、対象会社によるTOB期間延長請求などの措置を定めた。
○敵対的TOBに対して、買収防衛策が発動された場合、TOB買付者が著しく不利にならない様に、TOB買付け条件の変更や撤回などを可能とした。
○株主や投資家間の公平性を確保する観点から、TOB後一定割合以上となるものは、TOBに応募する株主全部の買付けを義務付けた。
○TOB期間中に、TOBを防止する目的で、他の大株主が抜け駆け的買い集めをすることを防ぐ観点から、対抗買いにもTOBを義務付けた。
【詳細の条件などは、金融商品取引法27条の2~13まで、ご参照のこと】

TOB規制の目的を、簡単に言い切ってしまうなら、株主間(将来株主である投資家も含める)の所有割合(支配権)に係る情報格差を可能な限り低減させ、売買するための判断情報の公平さを求めるものだ。つまり、1単元の株主も・5%の大量保有者も・20%超保有するグループ会社も・三分の一以上を保有する大株主も・親会社も、一定割合以上の株の移動に関する情報と売買の機会を平等に持つということになる。

 その視点で考えた場合、今回はどうなるのだろうか。KDDIは、JCOM株式を既に保有している会社の株式を保有することで、結果として37.8%のJCOM株を実質保有(うち34.1%分は、ひ孫会社として、残りは孫会社)することになる。判断は金融庁によるのだろう。
但し、手続に問題なければ、現行のTOB規制上の問題にはならない。しかし、TOB規制の目的に照らした場合、疑問が残るのも事実である。このことで、買付け者や同スキームを法的に検証する弁護士事務所を責めるつもりもないが、この様な大型のM&Aには、必ず投資銀行が関与しているはずなので、TOB規制という資本市場のルール遵守に配慮すべき助言を、アドバイザーとして行うべきだったと考える。
 今回の件で、投資銀行としての助言不足の感が否めない事象は、以下の2つについても言える。

・JCOMの親会社の合弁会社が解消され、KDDIが三分の一以上を保有する筆頭株主になるが、このことに関するJCOM側のデスクロージャーや意見表明は行われていない。(つまり、JCOMの少数株主にとって、今回の親会社解消・KDDI筆頭株主についての、企業価値を上げるものかどうか、会社側情報がないので判断できない)
・取得価格は、第三者機関の算定によるとされるが、その算定根拠が具体的に示されていない。これは、大型の投資を行うKDDIの株主・JCOM株を保有続ける少数株主双方にとって、情報不足ではないだろうか。

 このことは、単にルールを墨守せよということではなく、資本市場のルールについて、その目的に沿ってアドバイスすべき投資銀行の、プリンシプル・ベースの対応と責任ではないだろうか。

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MBOの進め方、そして上場子会社の場合は・・・ (1月20日)
先日、MBOが増加しているということをお伝えしたが、大きなプレミアムを既存株主に支払うMBOは、一般の投資家にとって、そのプレミアムの大きさは注目の的だろうが、既存株主にとってはTOBにしろ、その後のスクイーズ・アウトにしろ、保有株式の売却を強いられるのであるから、投資終了の宣告にもなっている。
このMBOは、経営者が何らかの形で、実質的な買い手になる訳であるから、売り手である株主とは利益相反になる構造であり、企業にとって、MBOはその進め方が非常に難しい。(MBOの支援を行う投資銀行にとっても同様に難しい。)
例えば、プレミアムは何%有れば良いとか、妥当な株価を算定する方式など、形式的な基準は無いので、難しいといったが、では、実質基準はあるのかというと、経済産業省の企業価値研究会によるMBOに関する報告書(2007年8月)では、以下の2点のMBO原則を上げている。

○第一原則:企業価値の向上=望ましいMBOであるかどうかは、企業価値を向上させるか否かを基準に判断されるべき
○第二原則:公正な手続きを通じた株主利益への配慮=MBOは取締役と株主との間の取引であるため、株主にとって公正な手続きを通じて行われ、株主か受け取るべき利益が損なわれることがないように配慮されるべき
 第一原則の企業価値の向上については、MBO後の事業再構築プランが取締役会等(監査役・第三者委員会を含む)で検討されるだろうか、第二原則の公正な手続きは、MBOにも多様な形があるだろうから、一律に判断することは難しい。ただし、企業価値研究会のMBO報告書では、以下の様な実務上の工夫を示している。
<意思決定過程における恣意性の排除の為に>
・社外役員又は独立した第三者委員会で、MBOの是非及び条件に対して諮問し、その判断を尊重する
・取締役及び監査役全員の承認(特別の利害関係を有する取締役を除く)
・意思決定方法に関し、弁護士・アドバイザー等による独立したアドバイスを取得すること、及びその名称を明らかにすること
・MBOにおいて提示される価格に関し、対象会社において、独立した第三者評価機関から算定書等を取得すること
<価格の適正性を担保する客観的状況の確保の為に>
・MBOに際してのTOB期間を比較的長期間設定すること
・対抗者が実際に出現した場合に、その対抗者と当該会社との接触等を過度に制限するような合意等を、MBOの実施に際して行わないこと
<株主意思確認を尊重する為に>
・MBOに際してのTOB買付株数の下限を、高い水準に設定すること

 以上のことは、多種多様なMBO事案においてはケース・バイ・ケースで、実質的に検討されるべきだと思うが、このような公正な手続きを守る対応は、上場会社の親会社が行う完全子会社の為のTOBについても、同様の措置がとられるべきだろう。
それは、上場子会社の経営を実質的に親会社が支配しているという現実を見れば、親会社がTOBで買い手になることは、少数株主にとってMBOと同様の利益相反構造と見做される。よって、少数株主にとっての公正な手続きは維持されなければならない。
 金融危機後の世界景気回復を睨んだ事業再編や、この3月から早期適用が可能となるIFRS(国際財務報告基準)を思えば、益々企業グループにおける上場子会社の選択と集中は進むと予想されるが、公正な手続きの確保は、上場親会社の日本の資本市場に対する責任になる。それが、大量のファイナンスで負荷をおった株主への配慮にもなると考える。

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投資家が注目し、株主が考えるMBOプレミアム (1月18日)
 一般の投資家が最も注目する公開企業の情報としては、TOB関連情報が一番だと思うが、市場価格に大幅なプレミアムを付して買取るのだから当然なのだろう。M&Aコンサルティング会社のストライクによると、昨年のTOBは79件(届出ベース)となり、2007年の102件に及ばないものの前年(78件)と同様の水準になっている。投資家注目のTOBプレミアムも、株価水準が安かったこともあって、年間ベースで55.6%と超高水準であった。このTOBプレミアムに関しては、特にMBO案件が高く、ここ2年間で、100%(つまり時価の倍)以上で買取るというMBO案件が6件もある。
MBO案件そのものも増加していて、2006年:9件→2007年:14件→2008年:16件→2009年:18件と昨年は過去最多となっている。

 このMBOのプレミアムに関して、昨年は重要な判決が2つあった。
一つ目は、牛角などを運営するレックス(現レックス・ホールディングス)のMBOに関して、TOB(2006年11月実施)後の少数株主を排除する為に、レックスが株主から買取る価格(TOB買取価格と同じ)に関して、株主がこの価格を不満として裁判所に株式買取価格決定を求めていた事件についてである。MBOを前提としたTOBの場合、対象企業は非上場になり事業等の再構築を行うが、TOBに応じなかった株主は、株式を何らかの形で保有出来る場合は少ない。JALでの再生手法でも話題になった全部取得条項株式に、保有する株式が変更され、会社が決定した買取価格で現金清算される場合が殆どである。TOB後に残った少数株主の権利としては、この買取価格に対して不満を示し、裁判所へ株式買取価格の決定を求める訴えを行うことが、残された手段である。MBOの場合の少数株主排除(スクイーズアウト)は、概ね半年内に行われるので、会社が決定する買取価格は、殆どTOB買取価格と同じ株価を使う。つまり、TOB買取価格に不満を持つ株主は、その対抗手段としてスクイーズウトの際のその買取価格に不満を示し、裁判所への価格決定を求める。レックスの件では、東京高裁判決では、会社側の買取価格を更に46%強に引き上げる決定を行ったが、昨年5月29日、最高裁は、この東京高裁決定を支持し、レックス側の抗告を棄却する決定を行っている。
 二つ目は、サンスターのMBO(TOBを2007年2月実施)に対する大阪高裁の決定で、会社側の買取価格650円(=TOB買取価格)に対して、更に29%引き上げ840円としている。
 この2件とも、MBOでのTOB実施後のスクイーズアウトの際の会社側の買取価格が低すぎると裁判所が判じたものだが、問題視しているのは、TOBの価格決定プロセスに関してである。TOB価格の算定方法等ではなく、TOBプレミアムの不足でもない。TOB実施前の、株価に大きな影響を及ぼす可能性がある会社側のディスクロージャーに関してである。通常は、適時開示の元に、発生事項・決定事項をタイムリーにディスクロすることを、企業が求められるが、この2件のTOB実施前の、業績下方修正予想や業績発表などが不自然として、企業の経営者が関与するMBOでのTOB価格の決定プロセスに問題があるとしている。

 裁判所が、TOB価格決定方法やプロセス・株価形成の環境まで踏み込んきたのは、業界関係者として多少の驚きを覚えるが、MBOの場合は、少数株主の選択は実質的に限られ、遅かれ(TOBに応じなくても)速かれTOB価格で現金化されてしまうことに対して、MBOを実施する企業の経営者は、最善の配慮を求められている。企業価値研究会のMBOに関する報告書(2007年8月)に於いては、株主の適切な判断機会の確保の為に、以下のことを求めている。
・MBOのプロセス等について、充実した開示
・MBO成立の為に意図的に市場株価を引き下げていると疑義を招く可能性がある場合のより充実した説明
・取締役が当該MBOに関して有する利害関係の内容についてのより充実した説明
・スクイーズアウトに際して、株主の権利である株式買取請求権又は価格決定請求権が確保できないスキームの採用禁止
・特殊な事情がない限り、スクイーズアウトの実施
・特殊な事情がない限り、スクイーズアウト価格はTOB価格と同一とする

 結果は、MBOにより会社株主構成から排除される少数株主が、満足出来るTOB価格決定プロセスとそのプレミアムが必要ということになる。
 
 
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三洋電機TOBへの投資銀行的視点 (11月6日)
 ようやく実行されるのかといった感想であるが、約1年掛かって実現している。やはりグローバル企業のM&Aというのは、例え当事者同士の合意が出来ていたとしても、時間がかかるし、TOB価格決定も、正直難しいと感じる。何も、市場価格から4割で安くTOBが実行されるからではない。
 この事案を、TOB事例として、投資銀行的視点で考えてみたい。
勿論、主役は三洋電機とパナソニックであるが、関係者はさながら日本における投資銀行のオールスター戦のような様相である。
売り手:大和、ゴールドマン、三井住友
買い手側アドバイザー:メリルリンチ
公開買付代理人:野村
対象会社アドバイザー:アビームM&Aコンサルティング
今回のTOB対象は、2007年3月に今回の売り手に第三者割当で発行された優先株(1株→普通株10株に転換可能)を含め普通株となっているが、公開買付価格は131円と時価より4割低い。時価より低いTOB価格は、事例としては企業救済型などであるが、最近は三洋電機に対して、エコカーに必要となる蓄電池技術やソーラー事業を評価する声も高まっていたので、市場の一部には、TOB価格に意外感をもつ考えもあるようだ。
しかし、今回のTOB価格は、昨年12月19日に合意・発表された三洋電機とパナソニックの資本・業務提携契約によるものだ。蓄電池事業に対する、米国や中国当局の独禁法関連の承認が遅れていたため、この時期まで延びてしまったが、2007年3月の出資者である大和・ゴールドマン・三井住友と、買い手のパナソニック、三洋電機3者間の基本合意はこの時なされ、131円は、この時のパナソニック側アドバイザーのメリルリンチによる株価算定書を基に、決定されている。ただし、この基本合意において、新たに1000億円の投資を、パナソニックが三洋電機に対して行うことも、記載されていた。
今回、TOBを実施する際においても、メリルリンチは、株価算定を買い手側アドバイザーとして行っているが、9月末に提出された算定根拠は、
・市場株価平均法:145~227円(TOB関連報道がされる以前の2008年10月31日を基準日)
・類似会社比較法:21~98円
・DCF法:126~246円
一方、三洋電機側アドバイザーのアビームM&Aコンサルティングの算定書は、11月2日に提出され。
・市場株価法:213~236円
・類似会社比較法:104~156円
・DCF法:87~187円
としているが、1000億円の投資の影響を、反映していないとしている。
勿論、買収価格合意は、パナソニックと実質的に過半数を有する投資者で決定され、TOBは株主交替で必要な手続きではあるが、その他の株主のTOB応募がなくても、三洋電機の子会社化は実現する。
売り手・買い手の合意がされている以上、このM&A案件は一見完了しそうにも見えるが、そう単純でもなさそうだ。それは、以下の理由による。
・買い手のパナソニックは、選択と集中で、上場子会社を完全子会社化している。
・この事案に関しても、将来完全子会社して、上場廃止する可能性を公表している。
・実際のTOBに当たって、予定される売り手分の実質過半数をTOB成立の最低条件として、他の株主分も応募分は全て買取る表明をしている。
そうすると、今回TOBに応募しない株主は、完全子会社化される時点で、パナソニックの株主になるか、スクイーズ・アウトの対象となる可能性があり、その過程で、残存する三洋電機株の買取り請求が起きる可能性がある。今回のTOB価格も議論になる可能性もあり、三洋電機側は、TOB賛同の意見表明をしながら、TOB価格の妥当性については意見を留保するという、難しい対応をしている。
 株主に対しては、TOB価格決定のプロセスと背景をよく理解してもらうしかないので、11月4日公表された公開買付け開始の公表文や意見表明においては、この手の文章には珍しく、詳細かつ分かりやすい文面で、価格決定プロセスが説明されている。
パナソニックが、選択と集中の戦略を進める中で、今回の事案の今後の対応についても、M&Aアドバイザーの適格なアドバイスが求められていく。
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TOBの風景 (9月15日)
TOB(Take Over Bid:公開買付)は、個人投資家にとってはIPOとともに関心の高いテーマである。
それは、通常のTOBの場合、時価(半年若しくは3カ月の平均株価を指すケースが多い)の3割程度プレミアムが上乗せされて公開買付価格が決まる事が多いので、株主や投資家にとって、TOBに関する話題は、注目せざるお得ない。それだけ投資家の関心の高いTOBに関する証券会社の現場の対応について少し触れてみたい。(ちなみにTOBは、実質的に証券会社でなければ実務業務を行うことが出来ない。)
【スタート:目的探し】
 TOBは、あくまでも株を大量に集める手段(原則発行済み株数の5%以上、以降3分の1、過半数と適用除外規定が狭められる)なので、証券会社は企業やファンドに対し、その大量に株を買い集める目的を提案し、また相談にのる。その目的とは、M&AやMBOなどがほぼ全株式を集めようとする買収案件から、業務提携を強化する為の資本提携、企業救済型の増資とセットになったもの、また大株主の売却意向に自社株取得で対応しようとするものなど、資本政策や大型の投資に関わる様々なケースがある。
【ローンチ:具体化へ】
 TOBは、買い手の行為なので、その目的に沿って売り手(既存の大株主)や企業経営者と大まかな合意が必要となるが、アドバイザーとして証券会社はその仲介をお膳立てする。買い手と売り手場合によっては企業経営者との正式な交渉スタートは、基本合意契約書からローンチ(実務的開始という意味)する。
 この段階に入ると、TOBの実現性は高まるので、案件に関する情報は当然インサイダー情報として管理されなければならない。もっとも証券会社としては、買い手・売り手が具体的検討に入った段階から、これらの情報は法人関連情報として厳格に管理されるが、TOBに係る案件を進めるアドバイザーとして、他の関係者から情報が漏えいする可能性を排除する努力をする必要もある。
【案件進行のポイント】
 案件進行のポイントは、DD(デューデリジェンス=財務を中心にした精査)と公開買付価格の二つある。DDそのものは、買い手が会計系事務所を使って行うことであり、アドバイザーとしてはDD作業の為の支援をするということだろうが、実際のM&A案件では、このDDの結果で案件が消滅してしまう場合も多い。買い手としては、DDは当然の行為なのだが、売り手にとっては自らの機密情報を相手に晒してしまうので、そのリスクは高い。公表されていたローソンによるam/pmや三菱UFJ信託による日興信託の買収交渉は、この段階で白紙撤回されている。売り手側には、この段階では別のアドバイザーが指名されているのが通常だが、交渉決裂した場合の防衛措置として違約金を定めることが必要な場合もある。
 公開買付価格に対するプレミアムの目途も検討しておく必要があるが、単に株価算定書だけではない。買い手側の買収メリットと売却予定の大株主や対象企業の経営陣の考え方を調整しておくことは必要で、アドバイザーとしてその仲介を行うこともある。また、自社株取得などは財源が企業の配当可能利益なので、プレミアムが余り高すぎても問題があるし、救済型のTOBの場合は特定の売り手以外を排除する目的でマイナスプレミアムの場合もある。プレミアムに対するアドバイスは、市場の専門家として証券会社の重要な機能である。
【TOB実務】
 TOBそのものは、市場外での株式大量買付行為なので、株の受渡しができる証券会社の専任業務である。売却希望の株主の口座を設け、株式を受入れ、キャンセルにも対応し、時には株主からのTOBに関する問い合わせにも応じる。証券会社の機能をTOBの為に貸し出す訳だが、この対価に数千万円のフィーを課す事が出来るM&Aアドバイスとは独立したビジネスである。しかし、この段階になると証券会社内の関係者も増加するので、TOB公表まで、より厳格な情報管理が求められる。
【TOB公表まで】
 段階が進捗するに伴って関係者が増加してくるが、このTOBに関する情報は、証券会社内は勿論、関係する金融機関、印刷会社、会計事務所等での厳格な管理が求められる。アドバイザーとしての証券会社は、これら関係者にもインサイダー情報の管理の徹底を促す努力も必要だ。
 社内売買の管理は勿論、公表前に情報を限定された関係者以外にメールで流すようなことは決してあってはならない事である。
以上、しつこいくらいの情報管理徹底である。
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中小企業のM&A (8月25日)
証券や地域金融機関の営業現場では、顧客である企業経営者へのアプローチとして“事業承継”を法人営業の主要テーマにあげるが、この事業承継の最終手段がM&Aであり、親族や従業員に事業を引き継げない場合、会社売却というより事業承継のM&Aといった方が、経営者及び関係者の抵抗感も少ないようだ。
 その中小企業のM&Aは、昨年は流石に減少したようだが、未公開企業が当事者となるM&A案件はそれでも1700件近くある。(未公開企業間のM&Aは約700件)
以下、中小企業のM&Aについて、ポイントとなると思われることの概要を挙げてみる。
【仲介者及び仲介手数料】
 最近は独立系のM&Aアドバイザーも増加してきており、地域金融機関や証券なども部店でのM&A業務を強化しているので、仲介機能は強化・拡大されている。一方コストは着手金(言い値500万円だが、実態は数十万から数百万)+成功報酬(リーマン方式を殆どの仲介者は提示するが、売却先の企業価値に数%の料率を掛ける)であるが、赤字や収益規模が小さい中小企業にとっては、仲介コストの高さ障害になるケースもあるようだ。
【中小企業のM&Aの特徴】
 中小企業白書(2006年版)によると、M&Aの条件として最も重視することは、“役員・従業員の雇用確保・処遇”と77.7%の経営者があげているが、売却価格より雇用関係を第一に考えるのが特徴となっている。以下、“会社の更なる発展”(58.1%)が二番目、“企業の譲渡(M&A)価格”(32.8%)は第3位でとなっているが、障害と考えられるものとしても、“役員・従業員の雇用・処遇”(57.5%)が第1位となっている。
【企業価値算定】
 いくら雇用を重視するといっても、企業価値算定はM&Aプロセスの中で重要なポイントになる。未公開企業なので、類似する上場会社の株価と比較するようなマーケット・アプローチ(市場価値法・類似会社比準法)については、あまり適切でないようにも思う。買い手側は、当然将来期待収益をベースに算定するインカム・アプローチ(DCF法・収益還元法)をとろうとするだろう。しかし、それらの前提となる事業計画に関して、中小企業の場合、その精度等が問題になる場合もあるので、財務諸表をベースに算定するコスト・アプローチ(純資産価額法)が適切だという意見もある。
実際は、「純資産価額方式」が59.5%、「収益還元価額方式」28.6%、「類似会社比準価額方式」2.4%、「その他」9.5%となっている。((財)中小企業総合研究機構調べ)
実際は、売却希望価格に近付ける為、ブランド力、技術力、営業基盤等などをのれん代として上乗せするケースもある。
【引き継ぎ、そして満足】
 多くの場合、売却先企業の経営者は、一定期間会社にとどまり、引き継ぎを行っている。これによって、企業統合後、62%の会社が順調に業績を伸ばしているとし、21%が企業理念も引き継がれていると答えている。よって、M&Aの満足度は、「非常に満足」42%、「やや満足」29%と7割以上が満足しており、不満は8%に止まっている。((財)中小企業総合研究機構調べ)

 以上の通りの実態であれば、中小企業のM&Aは、大企業のそれに比べて、格段に成功率の高い戦略と言える。
 
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TOBプレミアムについて (8月12日)
最近の三菱ケミカルによる三菱レイヨン買収の報道に限らず、市場ではTOB特に買付価格のプレミアムについて関心が高い。嘗ては欧米並みに、買収プレミアムを3割程度とする考え方も一部にあったが、多少回復しているとは言え、多くの企業経営者・株主は株価水準が歴史的に低いと思っているので、最近のTOB買付価格のプレミアムは高めに見える。(昨年TOB実施した69企業のプレミアムは、直前三カ月の株価水準に比べて48%)
 しかし、このTOBプレミアムは、実際にはTOBに応じる予定の大株主による合意がなければならない。また、買収対象の公開企業の経営者は、買収行為に関する賛否を求められるだけではなく、買収価格に関する見解を求められる傾向にある。TOBプレミアム決定に関する透明性は高まっている。
直近事例として、以下のプレミアム決定の根拠が示されている。
【大株主間の株式の移動で、一方が親会社となったケース】
・8月7日公表、MonotaRO(マザーズ:3064)=買付価格1010円(前日株価より▼31.3)
・買付価格決定の根拠=売却者である住友商事と買付後親会社となる実質的買付者クレンジャーが合意契約を提携した6月19日の過去三カ月株価平均では、△3.5%のプレミアム。また、7月下旬の臨時株主総会で、発行済みの11%を、住友商事から会社が自社株取得した価格875円よりも上。
・会社の買付価格に対する経営者の判断=独自の確認は行わない(但し、TOBそのものには企業価値を向上させるとして賛同)
※買付者が53%を保有する親会社となるものの、対象会社は上場を維持し、東証1部上場を目指す。時価より相当低い買付価格なので、TOB応募が6月契約時点で合意されや住友商事に限られると予想される。
【プライベート・エクイティ・ファンドによる買収、非公開化】
・7月30日公表、バイオセキュア(ヘラクレス:3809)=買付価10万円(前日株価より△30.2)
の経営陣と実質的買付け者であるPEのアント・キャピタルとの合意による。但し、買付者は、投資家から投資資金を預かるPEとしての性格上、買付価格に対する客観性を確保する為、価格算定を第三者機関として監査法人に依頼。
・会社の買付価格に対する判断=会社側は、第三者委員会を設置して、会社側が別途用意した価格算定書を基に審議し、その第三者委員会の意見を踏まえて、売却予定者となる経営者を除いたうえで合意決議した。
※買い手、会社側双方とも利益相反行為に対しては相当の注意を払い、合意プロセスを進めている。しかし、一旦は非上場化して少数株主を排除するのであるから、プレミアム等には、過去株価や業況をどの位まで読み込むか議論があるだろう。
【MBOのケース】
・7月27日公表、リオチェーン(名証2部:9834)=買付価480円(前日株価より△21.5)・買付価格決定の根拠=現経営陣が6割以上を保有する同族経営であるが、MBO手法での非公開化を目指して、経営者の持株会社以外の全ての株主からの取得を目的にしている。また、過去3ヶ月、6ヶ月の平均株価の50%以上のプレミアムがあるとしている。なお株価算定は、会計コンサルが行っている。
・会社の買付価格に対する判断=買付け当事者となる経営者を除く取締役・監査役全員で賛同決議を行った。買付価格に関しては、別のコンサルから株価算定書を取得。
※上場廃止を前提としてのTOBでは、少数株主は次にスクイーズアウトされるので、株価算定には相当の配慮が必要であるが、9年2月期ベースで1株当たり純資産が993円(四季報)あるのが気になる。

以上、直近事例として3例上げたが、TOBプレミアムは買付け者と売り手の株主による合意で決定される。当然のことかもしれないが、現在は、その決定プロセスの透明性と、利益相反に対して如何に配慮されたプロセスであるか示す事が求められている。
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法人関係情報の管理について (8月4日)
 M&Aやファイナンスなどに係る法人関係情報は、関係する金融機関だけでなく投資家や株主そして市場関係者にとって、重要な情報になる。まして、未公開の情報に関する取扱いは、M&Aやファイナンスをビジネスとする投資銀行業務において、その情報管理はイロハのイである。しかし、それでもM&A関連情報に関するインサイダー取引は、この業界関係者でも起こすし、ファイナンスに関連した情報操作まがいの行為や売買もあった。
 どの世界でも、最低限の事故率や犯罪率はあるのかもしれないが、この市場を企業や投資家に使ってもらおうとする業界であるなら、この法人関係情報(非公開の法人情報)の管理は、徹底されるべきである。
 加えて、この6月からは企業向け金融サービスを向上させようということで、ファイアーウォール規制が緩和され、オプトアウト方式で銀行・証券などの金融グループ内で非公開の法人情報が共有される。
 この法人関係情報の問題事例について、証券取引等監視委員会の金融商品取引業者への検査指摘事項が公表されているので、その中から問題事例の概要を紹介したい。
【情報の管理不備】
・経営トップが、上場会社の業績に関する未公開情報を取得したが、法人関係情報として登録していない。
・協会に引受ルールにより、主幹事として上場させた企業の月次決算情報を引受審査部が入手していたが、下方修正に係るにも情報について売買審査部に報告していなかった。
・M&A案件情報について、直接関与していない場合も、法人関連情報として登録・管理するという社内ルールがあるにもかかわらず、海外関連会社が主担当になったグローバルM&A案件で登録が漏れ、管理されなかった。
【投資助言業における管理不備と問題行為】
・社内規定において、法人関係情報の定義が明確化されておらず、これまでも法人関係情報の報告が皆無。しかし、アナリストがヒアリングした自社株取得に関する未公開情報を使って、顧客に対し、当該銘柄の買い推奨の助言をした。コンプライアンス・オフィサーには報告されず。
【ファイアーウォール関連】※緩和以前の事例なので、今後は利益相反体制の整備により、対応。
・金融グループ内における証券会社として、親法人等から、顧客の同意を得ないまま、親法人と顧客の非公開情報を含む情報処理システムを共用していた。
・複数の従業員が、顧客からの同意書を得ないまま、顧客に関する非公開情報を受領。また一部が、コンプライアンス部門に確認することなく、非公開情報を基に、有価証券買付けの勧誘を行った。
【実質的自己売買取引に利用】
・海外部門が引き受けたMSCBについて、まず繰上償還条項を行使する旨を通知し、その公表は発行会社行わせ、市場に新株予約権が行使されないと認識させた。結果、株価が上昇したところで株式を売却。実際は、新株予約権の行使が行われ、その分の株式が売却されたが、この事実の発行会社による公表は、売却後になった。
 法人関連情報は、企業がM&Aやファイナンスでのメリットを受けるよう、市場仲介者として活用されなければならない。しかし、その為には、利益相反行為に十分配慮した情報管理と情報判断が求められている。
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M&Aにおける利益相反  (7月28日)
 M&Aというのは、当然だが、会社を売り買いする行為だから、コーポレートガバナンス議論での会社は誰のものだという以上に、ステイクホルダー間の利益相反に十分配慮して進めなければならない。
また、M&Aアドバイザーにおいても、アドバイザーとしての善管注意義務が果たせるよう、自らも含めて、この利益相反問題に細心の注意を払い、そのM&A助言行為を進めなければならない。
 M&Aにおける利益相反問題を、整理してみる。
【上場企業の場合】
 ○経営者(取締役会)として、以下の判断が、株主の利益に反していないか
・買収防衛策の導入
・買収防衛策の実行
・TOBに対する意見表明
・MBOの実行時における買収価格の決定
・特定の者への大量の第三者割当増資
これらの判断は、本来は会社法により取締役会に授権されているが、株主との利益相反に配慮する為、最近は第三者による委員会等を設置して判断を委ねるケースも増えてきている。また、実際の決議を株主総会で行う場合もあるが、この場合も少数株主への利益相反に配慮する為、独立性の高い第三者の意見を表明させるケースもある。
【M&Aアドバイザーの場合】
 M&Aの助言行為は、法規制で定められたものではない。つまり投資銀行でなくとも、誰しもが出来る行為であるが、純粋な独立系アドバイザー以外は、以下の様な助言者としての利益相反の恐れがある。
○銀行の場合=売却先にローンを貸し付けているような再生案件絡みの場合、買い手ニーズに対応した助言を求められる場合であっても、ローンの回収を優先される利益相反のおそれ。また、敵対する複数の競争先への案件持ち込み行為も、問題があるとみられる。
○証券の場合=上場企業の主幹事証券として助言を行う場合、適切なアドバイスを行えるか疑念がもたれる場合もある。特に、買収資金のファイナンスとセットのMBOやTOB案件において、M&A助言行為の適格性が強く求められる。また、買い手側アドバイザーであるのに、売り手企業への投資銀行として出資している場合も問題がある。
○地域金融機関や証券の場合=中小企業のM&Aを手掛ける場合、ビジネスマッチングや事業承継の延長線上で、売り手・買い手双方の代理を行うM&A仲介を行うケースが多い。この場合、中立の第三者として当事者間の調停をすることは、アドバイザーにはあり得なく、どちらかに助言すれば、相手側の利益に反するのは当然である。しかし、この手の行為が日本のM&Aにおいて多いのは、以下の理由による。
・中小企業のM&Aは、企業規模が小さい為、ディールとしての収益性が確保しにくく、その為、買い手・売り手双方からのアドバイザリー収益を期待してM&A助言となるケースが銀行・証券との多い。
・最近は、独立系M&Aアドバイザーも増加したが、M&Aプロセス全体をコントロールできるようなM&Aのプロが少ない。(会計・財務的コンサル、事業戦略コンサルは増えているが)
※以上の行為が全て利益相反で問題あるというのではなく、これらの利益相反の恐れのある行為を的確に管理し、顧客に理解させる手順を、M&Aアドバイザーとして実行していくべきと、筆者は考える。
 ちなみに、この6月より銀行のファイアーウォール規制緩和により、このM&Aを始めとする利益相反管理は、金融機関に求められている。(銀行員が、M&A助言を行う投資銀行と兼業出来るので、より専門的なM&A助言も可能になる。)その為、銀行は、利益相反管理方針を公表し、かつ遵守しなければならないが、この利益相反管理方針でM&A絡みについて比較的よく記載された事例を以下に紹介する。

 ○利益相反取引の類型および主な取引事例(阿波銀行:利益相反管理方針より)
●利害対立型
  当行等とお客さまの利害が対立する取引もしくは当行等のお客さま同士の利害が対立する取引をいいます。
【取引事例】
・お客さまに対し資金調達やM&Aに係るアドバイス等を提供する一方、当該お客さまに対する投資、当該お客さまからの資産購入その他の取引を行う場合
・対立関係にある複数のお客さまに対し、資金調達やM&Aに係るアドバイス等を提供する場合 等
●競合取引型
  当行等とお客さまが同一の対象に対して競合する取引もしくは当行等のお客さま同士が同一の対象に対して競合する取引をいいます。
【取引事例】
・銀行とお客さまとが同一の会社に対するM&Aを行う場合において、そのお客さまに対してM&Aに関するアドバイザリー業務を行う場合
・競合関係にある複数のお客さまに対し、資金調達やM&Aに係るアドバイス等を提供する場合 等
●情報利用型
  当行等がお客さまとの関係を通じて取得したお客さまの情報を利用して、当行等が利益を得る取引もしくは当行等の他のお客さまが利益を得る取引をいいます。
【取引事例】
・同一の融資案件に対して、銀行とグループ会社が融資を行う場合
・お客さまに引受けまたは有価証券発行に関するアドバイス等を行いながら、他のお客さまに当該有価証券の取引の推奨を行う場合 等

※メガバンクのものは、取引事例記載としては抽象的であった。
 
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M&Aのインサイダー取引 (7月13日)
 資本市場に係る業務に従事するものにとって、未公開の重要事実に接する機会は多々あるが、この情報の管理こそ、信頼できる投資銀行としての最低限の必要条件であることに疑いはない。
 重要事実には、勿論、売上げの1割以上の変動といったような数値基準はあるが、株主や投資家の投資判断に影響があるかどうか判断出来てこそ、M&Aやファイナンスなどの投資銀行業務のアドバイザーに相応しい。会計や経営コンサルの専門家であっても、この情報管理が出来なければ、M&Aなどのアドバイザーとしては適正ではない。況や、証券会社や金融機関は、この6月からファイアーウォール規制が緩和されているので、法人に係る未公開情報の取扱いは、最善の体制で臨まなければならない。
 しかし、人より有利な情報というのは誰しも欲するが、それを自らの株取引に利用してならないのがインサイダー取引である。そのインサイダー取引に関して、課徴金対象となった33事例が金融庁から公表されており、やはりM&A関連が15事例(うち2事例は重なる案件)と多いので、概要を紹介する。

【M&A:TOB(公開買付け)絡み】
・証券会社社員、MBO案件で、買付け対象会社役員よりTOB契約提携を知る(公表の3カ月以上前)。公表の3日前に、知人名義で買付け。
・買付け会社の監査役、公表の2カ月前の経営執行会議でTOB計画を知る。公表の2週間前から3度に渡り自社社員名義口座で買付け。
・印刷会社社員の友人・元同僚、TOB関係書類を作成する印刷会社社員から情報を、複数のTOBの進捗に合わせて入手(10社分と3社分)し、買付け行為を繰り返した。
・対象会社の監査役、MBOで対象会社の経営者が買付け会社として設立準備していた者から公表の約2カ月前に情報を入手、公表の約3週間前に親戚名義で買付け。
・対象会社の取引先社員、公表の2カ月近く前に、対象会社の役員から業務提携の解消と新たな業務提携・TOBについての情報を入手、公表直前まで知人名義で持続的に買付け。

【M&A:業務提携絡み、違反者が複数に及ぶ】
(資本業務提携案件において)
・提携先役員よりの情報受領者、公表日の前日、提携先役員より資本業務提携情報を入手。公表日の直前に買付け。
・資本業務提携を取材した放送局の職員3名、公表日の公表直前に知り、即買付け(一部信用取引を利用した。)
・業務提携先の役員7名、総販売代理店になるという業務提携に関して、公表前の1~2週間前に顧問や営業担当者から情報を入手、その後公表までの間に買付け(1名配偶者名義)
・社員3名(営業、経理、業務管理担当)、社内会議において業務提携及び第三者割当増資に関する情報を入手、公表の約1週間前に買付け。

【M&A:合併、統合等に絡み】
・関係会社の管理に関する事務に従事する者、吸収合併に絡んで別の社員からメールで合併委員会の議事録を入手、公表直前の一週間で買付け。
・与信審査事務に従事する社員、合併に関してのデューデリジェンスへの参加で情報を入手、約1カ月前に信用取引で買付け。
・会計・決算事務に従事する社員、合併に関してのデューデリジェンスへの参加で情報を入手、公表の約3カ月前に買付け。
・役員及び予算・財務管理に従事する社員、公表の3か月前に株式交換に関する会議資料のコピーの入手及び上司から予算検討の指示で情報を入手、公表の直前・2週間前に、知人・親族名義で買付け。

【M&A:業務提携及び第三者割当】
・業務提携先の会社自身、業務提携に係る第三者割当実施の公表前に、対象会社株式を買付け。

 いずれも上場会社のM&Aに関連したものであるが、M&Aアドバイザーは、顧客の情報管理指導まで含めたプロジェクト管理能力を、求められている様にも思える。その厳格さがあって、資本市場を利用したM&A業務が成り立つのだろう。 

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地域金融機関のM&A (7月9日)
 この様な経済情勢下なので、日本企業のM&A市場も今年前半(1-6月)は金額ベースで3.8兆円と前年比で43%減となっているが、件数ベースでは1360件と前年比6・9%減にとどまる。(トムソン・ロイター調べ)金融危機の再発の懸念が遠のいても、取りあえず企業は手元資金を厚くし、投資は後回しといった大企業の行動の結果だというが、景気の先行きに係らず地方の中堅・中小企業において、事業承継というテーマに係るM&Aのニーズは高いとみられている。
 これらのM&A支援は、地域金融機関が中心になるだろうが、実際どのように取り組んでいるか、8日金融庁から公表された“20年度の地域密着型金融の取組み状況”から、その実績を取り上げてみる。

【M&A支援実績】
・支援件数365件=うち地銀315件(1行あたり平均2.9件)信金50件(1金庫あたり0.2件)
・上記のうち事業承継に係るもの158件=うち地銀126件、信金32件
【取組み実例】
(M&Aのマッチング支援)
○ 取引先の事業承継対策、将来戦略の選択肢としてM&Aを検討してもらうため、他行やM&A仲介会社と連携しM&A支援組織を設立。事業承継セミナーの開催や定期的な情報交換による情報力強化、他行・他機関案件のマッチング強化で、取引先への提案機会の増加に努めている。
○ 本部に税務・法務等の専門知識を有する事業承継担当者を配置し、取引先の要請により営業店担当者と帯同訪問し、M&A等による事業承継問題の解決を支援している。
○ M&A業務専担者を配置し、情報集約や事業承継スキームの立案等事業承継に関する総合的なアドバイスを実施し、営業店をサポートする。
○ コンサルティングプラザを設置し、外部専門家(税理士)との連携による事業承継・M&A相談等の顧客相談体制を構築した。
(外部専門家と連携した取組み)
○ 取引先の企業実態を深く理解している顧問税理士と提携し、事業承継セミナーの開催や税理士を交えた相談会により、事業承継ニーズ把握に取り組んでいる。
○商工会議所との連携を図るとともに、外部機関セミナーへの職員の派遣や勉強会の実施等により、本部及び営業店担当者の専門知識の強化に努めている。
(事業承継ファンドの組成・活用)
○事業承継ファンドが前経営者の相続人から会社の全株式を取得し、経営陣を派遣することにより事業継続と雇用確保等を図った。
○ 地域の中小企業の事業承継を実現することを目的として設立された事業承継ファンドに出資。
(株式買取に関する資金面の支援)
○ 大手製パン会社の事業再構築に伴う工場売却ニーズに対し、地場製パン業者を仲介。日本政策投資銀行と共同アドバイザーを務め条件調整等を図るとともに、買収企業に対し地元金融機関等と協調融資を実行し、M&Aの成立を支援した。
(外部機関への派遣等)
○ M&A業務に必要な税務、法務、企業評価手法及び実践的交渉術を職員に習得させるため、専門部署からM&A専門仲介会社へ研修派遣している。

 以上のようにM&A支援ビジネスとしては、専門部署の設置や外部専門家との連携構築段階で、創生期の感が否めない。しかし、逆説的に言うなら、その分M&A支援ビジネスとしての潜在力が大きい。
 また外部のM&A専業者を含めたネットワーク作りを試みているのは、M&Aビジネス基盤としての可能性を感じさせる。
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M&Aルール=英国の場合 (6月26日)
  英国流のM&Aルールを導入していこうという動きがあるようなので、少し先回りして英国のM&Aルールについて触れたい。
 その前に、ルール導入の目的は、諸々の問題点の解決である訳だから、現在の日本でのM&Aに関した問題点を、簡略化して挙げてみる。
●買収防衛策=今年は若干減ったとはいえ、上場会社の15%近くが導入している。
●TOB及びTOB価格に対する判断。
●MBOなどにおけるスクイーズアウト(少数株主排除)の問題。
●TOB、MBOなどにおける利益相反問題。
●M&Aに係る第三者割当増資問題。
●M&Aに係るインサイダー取引。
これらの問題に係る紛争を、時間とコストのかかる裁判などで争うのではなく、「シティ・コード」という実務ルールと「パネル」という専門家会合の仕組みで判断・裁定しようとするのが英国のM&Aルールであるが、2004年のEUの企業買収指令によって、その仕組みに強制法規制と公的な地位が与えられている。
【シティ・コードについて】
6つの一般原則と38の規則からなっているが、一般原則(プリンシプル)は以下、
①買収対象の企業の株主は全て同じ扱い。支配権(30%以上)の株主がいる場合は、他の株主は保護されなければならない。
②TOBに関して株主は十分な時間と情報を有すべき、また取締役会はTOBの実施による効果の見通しを提示しなければならない。
③取締役会は会社全体の利益をもとに行動しなければならず、TOBのメリットについて決定する機会を拒否してはならない。
④対象会社・買収会社・その他TOBに関係する会社の株価が人為的に歪められてはならない。
⑤TOBで買収側は、オファーを受けた場合、すべて応じ、またその手当をTOB前に確保しなければならない。
⑥TOBによって、対象会社の業務遂行が合理的な範囲を越えるほど長期にわたって妨げられてはならない。
となっている。
具体的なルール事例として、TOBの買収者側に課されたもので以下がある。
・単独又は共同で30%以上の議決権に相当する株式を取得しようとする場合、他の全ての株主に株式買取りの申し込みを行わなければならない。ただし、救済などの理由でパネルが認めた場合は免除される。
・上記の場合、原則現金による買付け。
・TOB買付価格について、TOB前の12カ月以内に既に取得した株式があれば、その取得価格の最高価額を下回ってはならない。
・買付者は、上記を行うに十分な資金力があることを明らかにしなければならない。
【パネルについて】
パネルは、イングランド銀行の賛助のもとに運営され、シティ・コードを運用する独立の自主機関である。パネルの正副議長3名と産業界からの独立メンバー3名は、イングランド銀行総裁が任命し、その他のメンバーは、パネルが任命したり、銀行家・会計士などの専門職業団体から任命される。

 今までの日本におけるM&Aルールは、買収防衛策にしろ、ポイズンピルにしろ、米国型の判例を中心としたものが主流だった。その意味では、日本においてもM&AやTOBに関する判例が揃ってきたと思うが、時間もコストも掛かることが、株主に有利に働くとは限らない。
英国ルールの様に、一般原則(プリンシプル)をベースに、M&A当事者とパネル事務局の任意のやり取りで殆ど済んでしまうのであれば、時間という貴重な資源を、株主も企業も失うことが少なくなるかもしれない。業界の大人のルールとして、実現まで関係者は頑張っていただきたいと思う。  
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少し粗いのでは、M&Aアドバイス (5月19日) 
最近、大型のM&A案件において、投資銀行的立場から見て、少しアドバイザーに問題があるのではないかと思う様な事例が、相次いでいるように思う。
①5/19報道されている、ローソンによるam/pm買収の白紙撤回
②5/14発表された三菱UFJ信託による日興シティ信託買収撤回
③3月末に日経に特集記事として取り上げられた米国株主10%ルール対応で、日本の企業同士の合併が延期
 それぞれの案件には、当然プロのM&Aアドバイザーがついていて、M&A業務として遂行しているはずであるが、
①の案件は、2月末に基本合意したが、am/pmの店名使用で、商標権をもつ米国am/pmの了承がどれず、破談になっている。諸々の事情はあるのだろうが、am/pmの店名利用が基本合意の前提なら、商標権利用の事前調整は、アドバイザーとして基本と思うが筆者の認識である。
②の案件は、昨年12月末に250億円で買収と基本合意されたものであった。当該信託の業務の殆どが投信の管理業務に特化していたが、最近系列の日興アセット売却で、三菱UFJ信託が売却先の一次選考から外れてしまった。その為、信託と投信(アセット)がセットにならなければ相乗効果は期待出来ないとして、違約金なしに、三菱UFJ側が、下りてしまった。通常、同業種のM&Aに関しては、競争相手でもある売り手側の情報をデューデリジェンスで入手するので、もし破談になった場合の違約金は、高めに設定しておくのが、M&Aアドバイスの常識と思う。
③の事象については、複数の事例が紹介されていたが、中でも新日石と新日鉱HDの企業統合事例では、この米国法対応の為、半年間統合が延期されたが、この経済環境下での統合の遅れは企業の大きな損失に繋がる。(詳細は、拙稿“M&A業務の障害―取り除く努力を”3/31ご参照)
 いずれの事例も、M&A対象となる企業の企業価値を毀損するリスクをもつ事例である。
 ちなみにM&Aアドバイザー業務を、大概に分けてみると以下の様になる。
○M&A戦略に関するアドバイス
○相手探し
○相手企業のデューデリジェンス支援
○想定M&A後の事業価値評価
○売買実行(TOB等も含む)
となるが、これを投資銀行のM&Aアドバイスのフルサービスとして、高額のM&A手数料を顧客企業からいただく。この手数料テーブルをリーマンテーブルというのが、最近は何か面映ゆい。
売買金額5億円未満        5%
5億円超~10億円未満部分   4%
10億円~50億円未満部分    3%
50億円超の部分          2%
での成功報酬となるが、着手金や案件の進展に応じた部分的な支払条件などある。
 また、最近はフルでサービスするより、顧客にニーズに応じて部分的にサービスを提供する業者もいて、例えば相手企業探しのみ・価格算定書のみなどで、部分的に参加する専業者も増えている。
 しかし、資本市場への影響の大きい公開企業のM&Aは、買い手・売り手が其々M&Aアドバイサーを雇い、企業価値を向上させるために努力するのであるから、案件に深く係るM&Aアドバイザーは、少なくとも、顧客企業の企業価値を下げるリスクを避ける努力は、最大限にすることが、求められる。
 それが、高いと言われがちな手数料の、対価である。
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M&Aの環境-全体そして証券 (5月11日) 
上場会社の経営者に尋ねると、半数以上はM&Aに積極的、もしくはM&A戦略強化を否定しない。
この場合、殆どが自社を買い手として想定しているが、一般企業のM&Aニーズにおいても、買いニーズに対して売りは1割程度だろうか。
 しかし、実際のM&A案件の現場では、売り案件情報を中心に、物事が進んでいくので、M&A業者は、精度の高い売り案件情報を求める。
従って、大手M&A仲介業者は、業界の再編、中堅以下の仲介業者は、事業承継などにテーマを絞って、M&Aにかかる売り案件情報を発掘していく。
当然のことかも知れないが、自らの企業を売り対象にするということは、その業界環境が相当厳しいという危機意識が、原動力になっている。
 今般の経済状況の厳しさから、業界を再編するようなニュースが多くなっているが、帝国データバンクが、全国の二万社超を対象に、業界再編に対する意識調査(回答率51%)を4月下旬に行い、結果を公表している。
業界再編に対する企業の意識調査

それによると、全体の2割、業界再編が進んでいると回答しているが、金融と小売は4割が、業界の再編を認識しており、今後の更なる業界再編ついては、両業界とも6割以上が進むと回答している。
また、業界再編の背景としては、○市場の縮小○価格競争の激化など環境の厳しさに関するものが、それぞれ半数近くを占めたが、金融に関しては、○収益力強化○規模の利益の追求といった利益に関するものが3割近い回答となっている。
 ところで、金融業界の中でも、大手の買収・再編など、最近話題の多い証券の業界環境を、M&A的に見てみると、以下の様になる。
 ○証券会社数:324社うち外証28社(2009年2月)←268社うち外証41社(2003年12月)証券会社は、ここ5年間毎年3~40社程度(15%程度)入れ替わっていて、差し引き毎年10社程度の増加になっている。
 この内、取引所会員は120社前半の推移で殆ど変わらないが、それ以外の増加。金証法の制定により、FX業者など証拠金取引やデリバティブに特化したものや、富裕層・法人関連ビジネスに特化したものの増加による。
 ○従業員数:バブル期の14~15万人には遠く及ばないが、5年前の8万人から増加し、最近は全体で10万人程度と安定していた。(さすがに、直近半年間では4000人減)営業に該当する外務員登録数は、全体の82%で、5年間で増加した殆どが、この外務員数である。
 11年前の金融ビックバンで、証券は許可制から登録制に変わり、基本的には参入自由な金融業となっているし、金証法によって、業務も拡大・登録要件も緩和している。
 ITバブル崩壊後の株式市況回復過程で、2割以上業容を拡大した姿が、証券業界で浮かび上がるが、金融危機後の業界再編は、何も大手だけの問題ではない。
 業界として大きいかどうかの議論は置いておいて、M&A仲介業者でもある証券会社が、自らのM&Aにより業界再編を進め、業界活性化を図って見せてこそ、M&A仲介者たる競争力も得る。

そうであることを信じているし、期待もされていると思う。
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M&Aビジネスのアンバンドリング (4月22日)   
トムソン・ロイターによると、2008年度日本に関わる公表M&A案件は、2,951件、TOBは107件だったそうだが、この様な金融情勢にもかかわらず、高水準を維持している。
 M&Aアドバイザーランキングを見ると、相変わらず日米の投資銀行が、ほぼ上位を占めているが、
一部に、M&A専業アドバイザーや会計系コンサルが順位を上げているのが目に付く。
 確かに、投資銀行にとってM&Aは、ファイナンスやトレーディングとともに、その中核のビジネスであるが、M&Aアドバイスは投資銀行にしか出来ない訳ではない。
 そもそもM&Aのプロセスを見ていくと、一般的には以下のような手順となっている。
(事業承継ガイドライン検討委員会によるプロセス、企業を売却するケース)
①M&A仲介機関の選定
 M&Aは情報管理が全て。M&Aを検討する経営者は、普段接触する金融機関・投資銀行・会計事務所などからM&Aアドバイザーを選任する場合が多い。
②売却条件の検討
 M&Aアドバイザーは、売却側経営者の譲れない線を、早期に固めておく必要があるが、その為にM&Aに関する環境情報を提供し、経営者の市場環境に関する理解を深めることも必要
③企業価値の向上
 M&Aアドバイザーは、売却交渉が有利に運ぶ為の、事前準備で財務リストラや業務のスリム化、経営計画の再構築等により、企業価値向上のアドバイスを行う。
④買い手候補の探索
 M&Aアドバイザーは、自ら、若しくは他者のネットワークを利用して、複数の買い手候補を経営者に提示。経営者納得の為の議論を進め、買い手交渉相手を絞る。

――ここまでがM&Aの準備段階だが、ここまでがM&Aアドバイザーとして重要な機能とも筆者は考える。

⑤条件交渉→基本合意
 M&Aアドバイザーは、売却側経営者の立場に立ち、買い手側との交渉が進む様に支援を行う。買い手側には、別途アドバイザーが付くのが基本。
⑥売り手企業の精査(デューデリジェンス)
 デューデリジェンスは、買い手が行うが、M&Aアドバイザーは、DD作業手順が問題なく行われるよう支援アドバイスを行う。
⑦最終交渉
 価格やM&A後の条件に関して、最終交渉となるが、M&Aアドバイザーは、価格については、適正価格に関する算定書(自ら作成、若しくは専門組織に依頼)を準備し、プレミアムに関する検討を支援する。
⑧売買契約(クロージング)
 売却企業が公開会社の場合、TOBが必要になるが、これは実質的には証券会社でなければできない。よって、M&Aアドバイザーが証券業務を営んでいない場合、別途証券会社を招集する。

――ここまで、ディールとしてのM&Aは終わりであるが、最近は以下も重要視されている。

⑨両者の調和
 M&A後のメンテナンスとして、最近はPMI(Post Merger Integration)=【 M&A後のシナジーを獲得するための統合プロセスとマネジメントを指す。】を重視する傾向が強まっている。M&Aアドバイザーとしては、このアフターM&Aまで想定して、調整を行っていくことが理想となっている。

以上、長々買いてしまったが、M&Aアドバイスを全てカバーしようとすると、時間かかるし多様な機能も求められる場合が多い。
全ての機能がある投資銀行でも、M&Aは途中でキャンセルになる可能性もあり、時間と人的コストのリスクを負うことになる。
 すでに金融アンバンドリングの流れの中で、このM&Aビジネスにおいても分業化が進んでいて、上記の各プロセスに対応するような専門家集団は、欧米ではブティック型投資銀行として育っている。
 日本においても、ブティック型投資銀行が育って、貪欲の汚名を投資銀行からぬぐい去る時代が来ることを、期待している。

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中小企業M&Aの課題と期待 (4月13日) 
株式市場の多少の回復もあって、証券会社の営業サイドも明るさを取り戻しているようであるが、といって、あまり景気の良い話も聞かない。しかし、その中で営業店からのM&A関連情報に関しては、相変わらず増加しており、その対応に多忙な様だ。
 営業現場でも、地元企業への営業アプローチとして、事業承継としてのM&Aなどといったテーマで、顧客への攻勢をかけているようだが、実際案件として話を進めていくのは、1割程度だろうか。
 一方、地域金融機関においても、6月からのファイアーウォール規制緩和を睨んで、地元企業へのM&Aサポート体制を強化しようという動きもある。M&A実績は、地銀全体で300件強(一昨年概算)で、ビジネスマッチングの3万件と比べると、実績はまだまだだが、リレバンの流れもあって、地元企業への密着した支援体制の強化では、強化注力しなければならない分野だ。
 ただし証券の立場からみると、ビジネスとしてのM&Aの取り組み体制が確立していないようにも思う。そのことが、そのまま地域での中小企業の事業承継対策として期待されている割には、成約実績が少ない原因だろうか。
 昨年11月の国会図書館調査では、以下の問題点が上げられている。
○経営者の心理的抵抗感
 売却への抵抗感→廃業への選択
○M&Aに関する情報の不足・偏在
 M&A仲介業者が、東京・大阪など大都市圏に集中、情報も同様
○経営管理の不足
 決算書類等が不備で、デューデリジェンスに至らない
○マッチングの問題
 中小企業に対する買い手不在、仲介者のネットワークが機能せず
○仲介手数料(成功報酬)の問題
 企業規模の割に、成功報酬額としてのフィーが高い
○企業価値(譲渡価格)の算定
 公開企業と違い、売買の指標が少ないのでオファー・ビットの乖離が大きい
これらのギャップを埋めていくのが、投資銀行的機能だろうが、案件規模の桁が2つぐらい違って、投資銀行が参入しないM&A市場なのである。
 しかし、以下の公的取組や地域金融機関同士のネットワーク化によって、上記の課題を埋めていくことも期待される。
 ☆情報提供・相談窓口
 商工会議所等の活動、独立系M&A業者の増加、”事業承継支援センター”設置(経済産業省2008年5月)
 ☆マッチングサポート
 大阪商工会議所”M&A市場”、東京商工会議所”東商M&Aサポートシステム””関東圏M&Aサポートネット”
 ☆金融・税制
 ・日本政策金融公庫、沖縄振興開発金融公庫”企業再建・事業承継支援資金”
 ・中小企業基盤整備機構=事業継続ファンド事業
 ・中小企業庁による非上場株式の価格算定の指針
また、今後政策等で期待したい事として、
 ○中小企業の売買のデータベース構築(市場化)-フランスには譲渡希望企業データベースが整備
 ○M&Aによる事業承継を促進する為の中小企業譲渡益の軽減
などが上げられている。
M&Aによる中小企業の事業承継

以上の公的支援にも期待しながら、中小企業のM&A仲介者としてのネットワーク作りは、地域金融機関に求められている資本市場の重要な機能の一つ、と考える。  
 
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 買収防衛策について (4月10日) 
 M&A情報専門会社によると、2009年に入って、世界的には金融・経済危機の影響もあってM&A市場は縮小傾向だが、日本でのM&A案件数は順調に推移しているそうで、2009年第1四半期は前四半期比で65%伸びているそうだ。
 一方、上場企業の方は、3月期の決算発表を控えてはいるが、6月の株主総会に向けての準備で多忙な時期である。
市場からすると、また買収防衛策導入の企業数が増加するかと思うと、せっかくの戻り歩調の市場環境にも、水を差された気分になる。企業の方には申し訳ないが、ハッキリいって買収防衛策に対して、投資家・株主は否定的なのである。
 とはいっても、上場企業は株主のものだけではない、というのが、今の社会のコンセンサスなのだから、せめて企業価値を上げるという大きな目的の基で、買収防衛策をどうするか、取締役会がまずは判断して下さいということで、2005年5月”企業価値・株主共同の利益の確保又は向上のための買収防衛策に関する指針”が経済産業省傘下の企業価値研究会で取り纏められた。
 このルールが買収防衛策導入の根拠になっているが、その後の敵対的買収事例やそれに対する判例から、
○経営者が、自己の保身に使わないことが、何らか担保されているか
○株主総会で導入した防衛策の発動が、その後の環境変化によって、本当に株主の利益になるのか
○特定の買収者だけに、お金を渡す仕組みは、本当に株主の利益になるのか
○買収者に説明を求めるのに、長期かつ詳細に求めることが、そもそも可能なのか、かつ単なる引き伸ばし行為とはならないか
 など、買収防衛策の目的遂行に対する懸念がだされ、昨年、企業価値研究会では”近時の諸環境の変化を踏まえた買収防衛策の在り方”を取り纏めている。
 今後増加が予想される防衛策絡みの報道を判断する考え方の一つとして、以下に紹介する。
《買収防衛策に対する取締役の行動への考え方》(※以下は報告書案より、見易さを考慮して、筆者が解釈して簡素化した記載である。)
①株主以外のステークホルダーの利益をタテにとって、利益に関する議論を不明確にしたり、自らの保身を図ってはならない。
②LBOであることのみで、買収防衛策の発動を判断してはならない
③買収提案に対して、検討期間を意図的に引き延ばしてはならない
④株主共同の利益を向上させるという観点から、買収提案・買収者の属性・資力等を判断
⑤株主の利益になるなら、買収条件の向上に向けて、買収者と交渉を行わなければならない
⑥株主共同の利益を最大化させる提案と判断した場合、買収防衛策を不発動を株主総会に問うまでもなく、直ちに決議しなければならない
⑦買収提案に対する取締役会の評価等は、事実に基づいて、株主に説明しなければならない
 と、かなり取締役会に対する要求は厳しいものになっている。
買収提案で、熱している取締役会が、冷静に対応していくのは少々困難とも思うが、現在、コーポレート・ガバナンス強化で、導入が検討されている独立取締役に、期待すべきことなのかもしれない 


 
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M&A-紹介レポート 資本市場研究所きずな