市場政策
投資に関する政策の中心は、”投資による個人の老後資産形成”ですが、その為に、個人に金融商品を販売する証券会社や金融機関は、”顧客本位の業務運営”で投資家の利益を最優先することが求められています。また、投資家の高齢化に対応する為、新たな制度の検討を含めて議論が続いています。
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最近の投資に関する金融行政
- 今後、個人の投資に大きな影響を及ぼすものとして、2022年11月28日に政府の新しい資本政策実現会議より公表された”資産所得倍増プラン”があります。
- 家計の安定的な資産形成を実現するため、顧客本位の業務運営、金融経済教育等について、幅広く検討を行うため、金融審議会市場制度ワーキンググループに顧客本位タスクフォースが設けられ、「中間報告(案)」が、2022年12月6日に公表されています。
- 環境変化に対応した金融・資本市場における利用者の利便向上と保護に向けて、今後の検討課題が金融審議会市場制度ワーキンググループで纏められ、「第二次中間整理(案)」として2022年12月12日に公表されています。
今後予想される金商法関連の改正(2023年10月時点)
◇公開買付制度
公開買付規制の適用範囲(市場内取引の取扱い、閾値等)の見直し
公開買付けの強圧性を解消・低減させるための方策
公開買付規制の柔軟化
◇大量保有報告制度
特例報告制度の適用要件の明確化
共同保有者の範囲の明確化
現金決済型エクイティ・デリバティブ取引の取扱いの明確化
実質株主の透明性を図るための方策
◇四半期開示
四半期開示(第1・第3四半期)について、金融商品取引法上の開示義務を廃止し、取引所の規則に基づく四半期決算短信へ「一本化」するべく、具体化を取りまとめ
◇サステナビリティ開示
我が国のサステナビリティ基準委員会(SSBJ)や今後策定される開示基準を、法令上の枠組みの中で位置づけ
◇市場インフラ機能強化
私設取引システム(PTS)のオークション方式に係る売買高上限(取扱銘柄全体で取引所対比1%)の緩和
株式公開買付け(TOB)5%ルールの適用について、「取引所の立会外取引」と「それに類似するPTS取引」の整合性確保
取引所とPTSのティック・サイズ(呼値の刻み幅)の適切な設定
投資単位の大きい上場会社株式の投資単位の引下げ促進
スタートアップ企業等への円滑な資金供給スタートアップ企業等の非上場株式について、特定投資家向けにPTSにおいて取扱い可能とするための制度整備
ベンチャーキャピタル(VC)ファンドが保有する非上場株式について、取得原価等による評価から公正価値による評価への移行を促進
新規公開(IPO)に必要な期間の短縮に向けた株式の振替制度の整備
ダイレクトリスティングの利用円滑化
◇その他の環境整備
トークン化された不動産特定共同事業契約(出資を募って不動産の売買・賃貸を行い、その収益を分配するもの)に対し、金融商品取引法の販売・勧誘規制等を適用
金融商品取引業者の営業所に掲示する標識について、インターネットで同内容の情報公表を義務付け
銀証ファイアーウォール規制については引き続き検討
◇顧客本位タスクフォース関連
金融経済教育の機会提供に向けた体制を整備(推進主体の常設化)
インベストメント・チェーン全体における顧客等の最善の利益を考えた業務運営の確保
顧客の立場に立ったアドバイザーの見える化 顧客への分かりやすい情報提供のルール化、デジタル技術の情報提供への活用
利益相反の可能性と手数料等についての顧客への情報提供のルール化
組成者が組成に係る費用等を販売会社に情報提供するための体制整備
資産運用会社のガバナンスや独立性の確保、プロダクトガバナンスの確保、に向けて、顧客本位の業務運営の原則」の見直 しやルール化等を検討
資産所得倍増ブラン 概要(2022年11月28日)
岸田政権の「新しい資本主義」実現の為の施策として、2022年11月28日に公表された”資産所得倍増プラン”の概要は、以下の様な内容となっています。
【目標】
・投資経験者の倍増、NISA口座数を1,700万→3,400万へ
・5年間で、NISA買付額 28兆円→56兆円
【施策】
★NISA拡充
①NISA 制度の恒久化
②NISA の非課税保有期間の無期限化
③一般 NISA・つみたて NISA の投資上限額の増加
④2024 年から施行される新 NISA 制度の取扱い
⑤NISA の手続きの簡素化
★iDeCo制度改革
①iDeCo の加入可能年齢の引上げ
②iDeCo の拠出限度額の引上げ及び受給開始年齢の上限の引上げ
③iDeCo の手続きの簡素化
⇒今後の確定拠出年金法等の改正を待ちます。
★中立的アドバイザー制度創設
<消費者に対して中立的で信頼できるアドバイスの提供を促すための仕組みの創設>
⇒令和6年中に新たに「金融経済教育推機構」(仮称)を設置、アドバイザーの認定等
★会社を通じた雇用者資産形成支援
<中立的な認定アドバイザーの活用>
⇒雇用者が利用する場合の企業の助成を後押し
<企業による資産形成の支援強化>
⇒企業の奨励金に対する課税の取り扱いを検討 等
★金融教育
<安定的な資産形成の重要性の浸透>
中立的なアドバイザーの認定に関する事業と併せ、官民一体となった金融経済教育を戦略的に実施するための中立的な組織として、新たに令和6年中に金融経済教育推進機構(仮称)を設立する。
<国民への働きかけ>
<公的年金シミュレーターと民間サービスとの連携等>
★国際センターの実現
2024年4月 | 金融・資産運用特区への取組みについて |
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1 | 金融・資産運用特区と国際金融センター構想について |
2 | 各地域からの特区支援要望について |
3 | 特区構想の背景と各地域の取組み |
4 | 資産運用立国に向けたそれぞれの役割 |
2024年3月 | 金融経済教育推進機構の設立について |
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1 | 金融経済教育推進機能について |
2 | 認定アドバイザー制度について |
3 | 英国のケースと個人投資への影響について |
4 | 業界の協力と金商業者の活用 |
2022年6月 | 改めて見直す投資助言業務~残高連動手数料普及を前に |
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1 | 投資助言業務に係る動向 |
2 | 投資助言業の問題と証券会社の投資助言業務の課題 |
3 | 金融商品の販売に伴う助言の位置づけ |
4 | 顧客からみた証券会社の投資助言について |
2022年4月 | 改めて見直す不公正取引~ブロックオファーと相場操縦行為について |
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1 | “ブロックオフォー”の構造と課題 |
2 | 相場操縦行為の定義と違反動向 |
3 | ブロックオファーの代替手法と牽制機能 |
4 | 事件が及ぼす影響について |
2022年3月 | 個人の特定投資家制度はどう見直されるか~新たな富裕層ビジネスとしての可能性 |
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1 | 期待されるプロ投資家 |
2 | 未上場株式取引に関する新制度 |
3 | 新たな個人の特定投資家定義は何を目指しているか |
4 | リテール証券の新たなビジネスとしての可能性 |
2021年11月 | コーポレートガバナンス・コード、スチュワードシップ・コード、顧客本位の業務運営原則~三位一体の日本市場改革 |
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1 | CGコード及びSSコードの概要とその推移 |
2 | CGコードを取り巻く環境と建設的な会話促進に向けた動き |
3 | 顧客本位の業務運営原則の強化とSSコードの関係について |
4 | 2つのコードとFD原則は何を変えていくか |
2020年9月 | 更に進む顧客本位の業務運営~金融審議会報告書より |
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1 | 顧客本位の業務運営の進展と深化 |
2 | 現状はどうか~直近のモニタリング状況等から |
3 | リテール営業現場の何か変えるか |
4 | 個人向け投資サービスに進化をもたらす可能性について敢えて考える出口戦略について |
2020年2月 | 日本銀行によるETF買入れ動向~ETF貸付制度と出口議論の行方 |
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1 | ETF買入れの現状と政策動向 |
2 | ETF貸付制度について |
3 | ETF買入れの影響に関する論点について |
4 | 敢えて考える出口戦略について |
♦日本銀行によるETF買入れ実績と個人・海外投資家の売買動向(2020年5月末)
2019年10月 | フィナンシャル・ジェロントロジー(金融老年学)の活用の異議~高齢者に対する投資サービスの在り方 |
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1 | フィナンシャル・ジェロントロジーとは何か |
2 | フィナンシャル・ジェロントロジーの背景 |
3 | 高齢者向け金融サービスへの取り組み |
4 | 高齢者社会の進展は投資の何を変えるのか |
2019年6月 | ディスクロージャー制度の概要 |
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1 | ディスクロージャー制度の概要 |
2 | 最近の問題事例と開示規制等の改正 |
3 | ディスクロージャー制度の抱える主な課題 |
4 | 投資家にとってのディスクロージャー |
2019年3月 | インサイダー取引について取引規制について~それぞれの立場の問題から |
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1 | インサイダー取引規制の概要 |
2 | インサイダー取引の実態 |
3 | 上場企業におけるインサイダー取引 |
4 | 証券会社におけるインサイダー取引規制等 |
2019年1月 | 高齢社会における金融サービスのあり方について~個人の投資はどう変わるべきか |
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1 | 高齢社会における金融資産 |
2 | 高齢社会における金融サービスと金融資産のあり方 |
3 | 高齢社会に向けた税制と金融サービスの現状 |
4 | 高齢社会での新たな投資サービスの可能性について |
2018年9月 | 不公正取引に関する最近の動向について |
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1 | 不公正取引の概要と現状 |
2 | インサイダー取引について |
3 | 相場操縦行為について |
4 | 不公正取引への対応強化について |
2018年7月 | “機能別・横断的な金融規制体系に向けて”中間報告の概要 ~フィンテックだけにとどまらない新たな金融商品・サービスの在り方 |
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1 | 機能別・横断的な金融規制体系とは何か |
2 | 先行する横断的金融サービスの事例 |
3 | 先行した横断化事例と横断化規制の目的 |
4 | 金融商品取引に係る金融規制で今後予想される動向 |
2018年6月 | 顧客本位の業務運営に関する原則と個人投資家 ~フィデューシャリー・デュ―ティ―規制の影響 |
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1 | FD規制導入の背景 |
2 | FD規制議論における指摘事項 |
3 | 金融商品販売者としてのFD規制 |
4 | FD規制により今後起きる変化の可能性について |
2017年2月 | 個人への投信販売規制の流れ~フィデューシャリー・デューティ-にどう対応するか |
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1 | 個人への投信販売規制強化の流れ |
2 | 投信販売とフィデューシャリー・デューティ-(その課題とは) |
3 | 顧客本位の業務運営とは何か |
4 | 投信販売はどう変わるべきなのか |
2017年1月 | 日本銀行によるETF買入れについて~市場への影響と課題、そして出口は? |
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1 | リスク資産買入の沿革と現状 |
2 | ETF買入れの実態とその効果 |
3 | 市場関係者が指摘する懸念 |
4 | 敢えて考えるEXITについて |
2016年2月 | 虚偽記載・監査法人処分・課徴金~投資家・株主は企業の不正会計処理からどう守られるのか |
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1 | 東芝の不正会計問題と関係者処分について |
2 | 企業の開示規制違反と課徴金について |
3 | 監査法人の処分事例と制度的課題 |
4 | 投資家・株主からみた課題 |